読んだもの(書籍)
〇松本清張『砂の器』上下(新潮文庫) 新潮社 1973.3 社会派推理小説の代表作で、何度か映画やテレビドラマにもなっているが、私は全く触れたことがなかった。突然、読んでみたくなったのは、先日読んだ遠藤正敬さんの『戸籍の日本史』に、戦時中、空襲で多…
〇河野有理『明六社:森有礼、西周、福澤諭吉らが集った知的結社』(中公新書) 中央公論新社 2026.2 明六社は、明治初年の代表的な知識人たちが集った知的結社である。社名は、設立された明治6(1873)年にちなむとともに、おそらく「明け六つ時」にかけて…
〇遠藤正敬『戸籍の日本史』(インターナショナル新書) 集英社インターナショナル 2025.10 戸籍という「制度」あるいは「秩序」について、歴史の観点から掘り起こした労作。著者の結論は終章に述べられているとおり、 戸籍を持たないことの不利益はほとんど…
〇鶴見俊輔『ひとが生まれる:五人の日本人の肖像』(角川新書) 角川書店 2025.4 2028年のNHK大河ドラマは、ジョン万次郎を主人公とするという発表を見た。思い出したのは、吉見俊哉氏が『アメリカ・イン・ジャパン』で、鶴見俊輔がジョン万次郎について書…
〇吉見俊哉『自己との対話:社会学者、じぶんのAIと戦う』(集英社新書) 集英社 2025.12 吉見先生の著書はほぼ全て読んでいるが、かなり変わった1冊だった。本書には「AI吉見くん」が登場する。これは、東大工学系研究科の堀井秀之氏(著者の高校以来の友人…
〇海野典子『イスラームが動かした中国史:唐宋代から鄭和の大航海、現代回族まで』(中公新書) 中央公論新社 2025.12 中国の社会や文化に大きな影響を与えてきたムスリム(イスラーム教徒)、とりわけ回族について、7世紀から現代までの中国の歴史を紐解く…
〇馬伯庸;池田智恵訳、立原透耶監訳『長安のライチ』 文藝春秋 2026.3 昨年、日本でも公開されて話題になった中国映画『長安的荔枝』の原作小説である。私は先にドラマ版を視聴し、次に映画を見たら、かなり違いがあったので、原作はどっちに近いんだろう?…
〇堤邦彦『大江戸怪談事情:『耳嚢』の怪異をひもとく』(歴史文化ライブラリー) 吉川弘文館 2026.1 『耳嚢(耳袋)』は、勘定奉行・南町奉行も務めた根岸鎮衛(ねぎし しずもり/やすもり、1737-1815)が約30年にわたり書きためた雑話集で、怪談奇談の宝庫…
〇飯野亮一『晩酌の誕生』(ちくま学芸文庫) 筑摩書房 2023.11 SNSで「おもしろかった」という感想を見かけて、気になって読んでみた。飯野亮一さんは食文化史の研究者で、以前にも『居酒屋の誕生』を読んでお名前を覚えていたので、その本かな?と思ったら…
〇和田静香『中高年シングル女性:ひとりで暮らすわたしたちのこと』(岩波新書) 岩波書店 2025.12 著者は「中高年シングル女性」の当事者だというが、私もそうである。なので以前から、このカテゴリーについて書かれたルポや評論は、わりあい気にして目を…
〇川戸貴史『商人の戦国時代』(ちくま新書) 筑摩書房 2025.8 戦国時代史はあまり得意でないのだが、本書は面白かった。気になる記述のページを折っていたら、折り込みだらけになってしまった。本書は戦国時代の経済活動、特に商人の活動に注目する。中央権…
〇大谷亨『中国TikTok民俗学:スマホからはじまる珍神探訪』(NHK出版新書) NHK出版 2025.12 本書の冒頭にある自己紹介によれば、著者は厦門に暮らす日曜民俗学者で、日本語教師のかたわら、休みになれば各地へフィールドワークに出かけ、「民間信仰」の調…
〇中條献『アメリカ史とレイシズム』(岩波新書) 岩波書店 2025.10 読み終えたあと、すぐに感想を書きたい本もあれば、書きたくない本もある。これは完全に後者だった。本書は、アメリカという国家を「セトラー・コロニアリズム」に基づく社会と定義し、そ…
〇田所昌幸『世界秩序:グローバル化の夢と挫折』(中公新書) 中央公論新社 2025.9 子供の頃からなんとなく、世界は試行錯誤しつつも望ましい方向に進んでいくように思ってきたのだが、この10年くらい、期待が裏切られることが多くて、悲観的になっている。…
〇加藤徹『後宮:宋から清末まで』(角川新書) KADOKAWA、2025 『後宮:殷から唐・五代十国まで』の続編である。扱われる王朝は、宋、遼、金、元、明、清。非漢民族による征服王朝(遼、金、元)を別にすると、日本人にも比較的なじみのある時代ではないか…
〇加藤喜之『福音派:終末論に引き裂かれるアメリカ社会』(中公新書) 中央公論新社 2025.9 最近のアメリカの政治状況をめぐって、なぜか古めかしい宗教用語を耳にすることがある。福音派(エヴァンジェリカル)は、元来、プロテスタント教徒を指す一般的な…
〇加藤徹『後宮:殷から唐・五代十国まで』(角川新書) KADOKAWA、2025 「後宮とは何か」と題した40ページほどの序章では、中国の後宮の特異性がざっくり語られている。後宮は皇帝の世継ぎを安定的に供給するシステムである。そのために女性の貞操と妊娠は…
〇家近亮子『蒋介石:「中華の復興」を実現した男』(ちくま新書) 筑摩書房 2025.8 蒋介石(1887-1975)には、特に関心を持っていたわけではない。大陸中国のドラマでは悪役側だし、台湾史でも民主化を阻んだ独裁者の印象が強い。それが、ちょっとした気の…
〇笠原十九司『南京事件 新版』(岩波新書) 岩波書店 2025.7 著者の旧版『南京事件』は1997年刊行だが、私は読んでいない。新版には新たな史料発見や研究の発展が取り込まれているが、旧版が日本軍史料を多用し「殺す側の論理・作戦」に従って叙述したのに…
〇柿沼陽平『古代中国の裏社会:伝説の任侠と路地裏の物語』(平凡社新書) 平凡社 2025.3 『史記』遊侠列伝にも取り上げられた大侠・郭解(前漢時代、紀元前170年頃~)の生涯をたどりながら、古代中国の裏社会を多面的に描き出す。著者は、前著『古代中国…
〇塩出浩之『琉球処分:「沖縄問題」の原点』(中公新書) 中央公論新社 2025.6 「琉球処分」とは、日中の両属国家だった琉球王国を日本が強制併合した過程をいう。これは本書のカバーの袖(折り返し)や帯に記載された説明であるが、著者は「まえがき」で、…
■藤田美術館 『酔』(2025年7月1日~9月30日)『雨』(2025年6月1日~8月31日)『鳥』(2025年5月1日~7月31日) 「酔」には菱川師宣筆『大江山酒吞童子絵巻』あり。全体にパステルカラー系の色合い。鬼たちも頼光一行も、あまり強そうでない。『饕餮禽獣文…
〇新関公子『東京美術学校物語:国粋と国際のはざまに揺れて』(岩波新書) 岩波書店 2025.3 東京美術学校(東京芸術大学の前身)は、1887(明治20)年10月に創立が決定し、明治22(1889)年2月に最初の学生を受け入れた。芸大では明治20年を起点に創立何周…
〇須田努『幕末社会』(岩波新書) 岩波書店 2022.1 幕末、すなわち西暦でいうと19世紀前半の日本社会について、まず前提となる江戸時代の社会枠組みを確認したのち、「天保期(1830-1844)」「弘化から安政期(1845-1860)」「万延から文久期(1860-1864)…
〇早尾貴紀『イスラエルについて知っておきたい30のこと』 平凡社 2025.2 パレスチナ・ガザ地区の状況は、断片的なニュースから推測しても本当に惨いらしい。しかし私はイスラエル・パレスチナ問題について、きちんと思考できるほどの知識がないので、一から…
〇岡本隆司『二十四史:『史記』に始まる中国の正史』(中公新書) 中央公論新社 2025.4 「二十四史」とは、中国の史書の系列(シリーズ)の総称である。おおむね歴代王朝を単位(ユニット)にして編纂を重ねた書物群で、合計24部が「正史」と見做されている…
〇木村幹『国立大学教授のお仕事:とある部局長のホンネ』(ちくま新書) 筑摩書房 2025.4 韓国政治を専門とする木村幹先生の著作は『韓国現代史』『全斗煥』など、何冊か読んでいるが、今度は「大学教授という仕事」について書いたというので、へえ~(物好…
〇黒田明伸『歴史のなかの貨幣:銅銭がつないだ東アジア』(岩波新書) 岩波書店 2025.3 経済史というのは、私にはやや苦手な分野なのだが、現代人の常識をくつがえす話がたくさんあって、たいへん面白かった。人類の歴史を振り返ると、政府が通貨供給を独占…
〇満薗勇『消費者と日本経済の歴史:高度成長から社会運動、推し活ブームまで』(中公新書) 中央公論新社 2024.8 本書は戦後日本の社会と経済の変化を消費者の姿から読み解いていく。「消費者」という言葉が学問の議論を超えて使われ始めるのは1920年代、さ…
〇吉見俊哉『アメリカ・イン・ジャパン:ハーバード講義録』(岩波新書) 岩波書店 2025.1 本書は、著者がハーバード大学の客員教授として2018年春学期に行った講義「日本の中のアメリカ」を活字化したものである。ちなみに2018年は最初のトランプ政権の2年…