見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

悪漢が好き/少年探偵団(江戸川乱歩)

○江戸川乱歩『少年探偵団』(ポプラ文庫・少年探偵) ポプラ社 2008.11 ごく最近、街の本屋で「江戸川乱歩・少年探偵」シリーズの文庫本がズラリと並んでいるのを見た。怪人二十面相と名探偵・明智小五郎が知恵比べを繰り広げる、子供向けミステリーのシリー…

若冲にも会えます/朝鮮王朝の絵画と日本(栃木県立美術館)

○栃木県立美術館 企画展『朝鮮王朝の絵画と日本-宗達、大雅、若冲も学んだ隣国の美』(2008年11月2日~12月14日) http://www.art.pref.tochigi.lg.jp/jp/index.html 気になっていた展覧会に行ってきた。これまで全く意識したことのなかった美術館で、いっ…

楽園の内側/沖縄、だれにも書かれたくなかった戦後史(佐野眞一)

○佐野眞一『沖縄、だれにも書かれたくなかった戦後史』 集英社 2008.9 沖縄へはまだ行ったことがない。子供の頃は、亜熱帯の楽園だと無邪気に信じていた沖縄の近代が、差別と抑圧の歴史であることを知ったのは、小熊英二の『「日本人」の境界』(新曜社、199…

信濃木曽路旅行:「夜明け前」を歩く(馬籠~妻籠)

連休2日目は、中津川駅前からバスで馬籠(まごめ)へ。木曽十一宿の最南に位置する馬籠宿は、島崎藤村の生誕地であり、小説『夜明け前』の舞台として名高い。私が『夜明け前』を通読したのは、つい2年前のことで、非常に感銘深かったので、一度、現地を訪ね…

信濃木曽路旅行:中世の面影(松本~諏訪)

長野新幹線の車内に置いてあった雑誌「トランヴェール」で気になる記事を見つけた。松本市の中心部の交差点に残る「牛つなぎ石」。これは、武田信玄が、今川・北条氏によって塩の供給を断たれ、窮地に立った折、越後の上杉謙信が送った塩を運んできた牛をつ…

信濃木曽路旅行:教育の近代遺産(松本市)

■旧制高等学校記念館 たまたま連休前に松本に行く用事ができた。とりあえず1泊することにして、観光案内所でもらった市内地図を見ていたら、隅の方に「旧制高等学校記念館」という文字が目についた。旧制松本高等学校(その後は信州大学文理学部)の校舎を利…

10人の学者たち/座右の名文(高島俊男)

○高島俊男『座右の名文:ぼくの好きな十人の文章家』(文春新書) 文藝春秋 2007.5 2003年に『本の雑誌』が企画した「私のオールタイムベストテン」を敷衍して、「私の好きな著作家ベストテン」について各々1章を設けて語ったもの。取り上げられているのは、…

通じない「日本式」/現代中国の産業(丸川知雄)

○丸川知雄『現代中国の産業:勃興する中国企業の強さと脆(もろ)さ』(中公新書) 中央公論新社 2007.5 中国における工業製品の製造と流通はどうなっているのか。本書は、テレビ、エアコン、VTR、携帯電話機、パソコン、自動車という具体的な産業に密着しな…

書物は印刷から/ミリオンセラー誕生へ!(印刷博物館)

○印刷博物館 企画展示『ミリオンセラー誕生へ!:明治・大正の雑誌メディア』(2008年9月20日~12月7日) http://www.printing-museum.org/ 幕末に生まれ、明治・大正・昭和にかけて、日本の大衆文化を支えた雑誌メディアの発展の過程をたどる展覧会。私は国…

読書と大学/学問の下流化(竹内洋)

○竹内洋『学問の下流化』 中央公論新社 2008.10 amazonのカスタマーレビューにきわめて適切な評が載っていた。「この本は、実際には竹内先生による膨大な書評や雑文をコンパイルしたもので、題名である『学問の下流化』についてストレートに論じているのはた…

電子エクリチュールの申し子/知に働けば蔵が建つ(内田樹)

○内田樹『知に働けば蔵が建つ』(文春文庫) 文藝春秋 2008.11 売れっ子の内田先生がまた本を出されたことを、ネットの広告で知った。「私が諸君に伝えようとしているのは雑学ではなく、教養である。どうも諸君は『雑学』と『教養』の違いをご存じないようで…

近世日本のアーツ&クラフツ/大琳派展(東博)

○東京国立博物館 特別展『大琳派展-継承と変奏-』(2008年10月7日~11月16日) http://www.tnm.go.jp/ なんだよ、また琳派かよ、と思っていた。チラシを見ると、既知の作品ばかりで、全く意欲をそそられない。けれども世間の人気は上々らしくて、めったに…

冷徹な愛情/小僧の神様・城の崎にて(志賀直哉)

○志賀直哉『小僧の神様・城の崎にて』(新潮文庫) 新潮社 1969.7 読みたいものが切れたので、手近にころがっていた文庫本に手を出す。去年の夏、久しぶりに『清兵衛と瓢箪・網走まで』を読み直して、ちょっとした衝撃を受けたあとに買って、そのまま寝かせ…

関西旅行11月編:室町将軍家の至宝を探る(徳川美術館)

○徳川美術館 秋季特別展『室町将軍家の至宝を探る』(2008年10月4日~11月9日) http://www.tokugawa-art-museum.jp/ どうしても見たくて、最終日に駆け込みで行ってきた。室町将軍家=足利将軍家の「至宝」とは、要するに「唐物(からもの)」のことだ。「…

関西旅行11月編:国宝への道(京博)

○京都国立博物館・平常展示館 『国宝への道、いざ!京都国立博物館へ』 http://www.kyohaku.go.jp/jp/index_top.html 週末関西旅行2日目。直前に、六角堂(頂法寺)で136年ぶりにご本尊の特別公開があることが分かり、友人2人と集結して拝観。つい情報交換の…

関西旅行11月編:崇高なる山水(大和文華館)

○大和文華館 特別展『崇高なる山水-中国・朝鮮、李郭系山水画の系譜-』 http://www.kintetsu.jp/kouhou/yamato/ 正倉院展のあと、興福寺の南円堂で、友人と待ち合わせ。日頃、あまり会えない友人なので、昼食~デザートと、つい話し込んでしまう。友人と別…

関西旅行11月編:正倉院展(奈良博)

○奈良国立博物館 特別展『第60回 正倉院展』 http://www.narahaku.go.jp/ 毎年通い続けている正倉院展。今年はいいかなあ、と思っていたのだが、行ってきた友人の話を聞くと、やっぱり行きたくなる。名古屋に前泊して、いちばん早いのぞみに乗り、8時過ぎに…

日米の比較から/ジャーナリズム崩壊(上杉隆)

○上杉隆『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書) 幻冬舎 2008.8 著者は、NHK報道局、政治家の秘書、ニューヨークタイムズ東京支局取材記者を経て、現在はフリーランスで活動しているジャーナリスト。本書では、日米の比較をもとに、日本のマスコミ(主に新聞)…

写し、学(まね)び/陶磁の東西交流(出光美術館)

○出光美術館 やきものに親しむVI 『陶磁の東西交流-景徳鎮・柿右衛門・古伊万里からデルフト・マイセン-』 http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/index.html 楽しい展覧会である。チラシを手にしたとき、そう思った。裏面には、双子・三つ子のような、…

連続シンポジウム『情報の海~漕ぎ出す船~』第2回

○東大情報学環・読売新聞共催 連続シンポジウム『情報の海~漕ぎ出す船~』 第2回 情報の海~沈まぬ「図書館」丸 http://blog.iii.u-tokyo.ac.jp/news/2008/09/post_33.html 第1回「マストからの眺め」が激しく変化する情報環境を俯瞰したのに続き、第2回は…

鎌倉・宝物風入れ(円覚寺、建長寺)

○円覚寺~建長寺~鎌倉国宝館 鎌倉に行ってきた。お目当ては、毎年、文化の日を挟んだ3日間、円覚寺と建長寺で行われる宝物風入れである。以前に1度、鎌倉在住の友人に案内してもらったのは、7、8年も前になるだろうか。宋元の仏画や、鎌倉・室町の武将や名…

国家と私(わたくし)と/洋行の時代(大久保喬樹)

○大久保喬樹『洋行の時代:岩倉使節団から横光利一まで』(中公新書) 中央公論新社 2008.10 幕末以降、近代日本の国づくりに関わった人物は、一度は「洋行」している。政治、経済、文化、教育、科学技術、ジャーナリズムから娯楽興行まで、あらゆる分野にお…

「非戦」の通奏低音/森鴎外と日清・日露戦争(末延芳晴)

○末延芳晴『森鴎外と日清・日露戦争』 平凡社 2008.10 鴎外は、どうも好きになれない。陸軍軍医総監として国家に生涯を捧げたように見えて、近代的自我に根ざしたロマンチシズムの表現者でもあるし、権威主義的な家父長の顔と、でれでれに家庭的なパパの顔が…