見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

大学は生き続ける/「文系学部廃止」の衝撃(吉見俊哉)

○吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』(集英社新書) 集英社 2016.2 タイトルだけ見ると、昨年夏の「文系学部廃止」通知騒ぎを論じたもののようだが、本書のパースペクティブはずっと広く深い。日本の大学が、この十数年、苦闘し続けている問題がみっちり詰…

美しい国の美しいデザイン/ようこそ日本へ(国立近代美術館)

○国立近代美術館 企画展『ようこそ日本へ:1920-30年代のツーリズムとデザイン』(2016年1月9日~2月28日) この展覧会が見たくて行ったのだが、ついでなので、もうひとつの企画展『恩地孝四郎展』(2016年1月13日~2月28日)も見た。版画の特集展で名前を見…

安酒の虚しさ/ナショナリズムの誘惑(安田浩一他)

○安田浩一、園子温、木村元彦『ナショナリズムの誘惑』 ころから 2013.6 私は寡聞にして初めて知ったが、2012年9月、村上春樹が朝日新聞に寄稿したエッセイで、領土問題が「国民感情」へと転化する状況を「安酒の酔い」に譬えていたのだそうだ。我々は、安酒…

初めて見る煎茶道具/茶の湯の美、煎茶の美(静嘉堂文庫美術館)

○静嘉堂文庫美術館 『茶の湯の美、煎茶の美』(2016年1月23日~3月21日) リニューアルオープン展の第2弾。文化財散歩みたいな中高年の団体客でにぎわっていた。静嘉堂の茶道具といえば、国宝『曜変天目』に重文『油滴天目』。これらはしっかり出ていた。前…

公共空間とマナー/NO!ヘイト:出版の製造責任を考える

○ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会編『NO! ヘイト:出版の製造責任を考える』 ころから 2014.11 書店の棚が「嫌中嫌韓」本と「日本はすごい」という自画自賛本で埋まっている状況が、確かについ最近まであった。私は、比較的大きな書店と…

青磁の魅力、赤絵の魅力/中国の陶芸展(五島美術館)

○五島美術館『館蔵・中国の陶芸展』(2016年2月20日~3月27日) 展示室に入って、見渡す限り、陶芸だけなのを確認。参考展示の書画などが一切なく、シンプルですがすがしい風景だった。同じテーマのコレクション展は何度か見ているので、知っている作品ばか…

小麦の至福/雑誌・別冊Discover Japan「ニッポンの美味しいパン」

○雑誌・別冊Discover Japan『ニッポンの美味しいパン』(エイムック) エイ出版社 2016.10 重いテーマの硬い本を続けざまに読んでいるので、少し頭をほぐすために本書を買ってきて、眺めている。以前、海外経験の長い職場の上司(女性)が「アメリカには美味…

「閉店」友朋堂書店で最後のお買いもの

今日(土曜日)の朝。閉店のニュースが流れて1週間なので、もう完全に閉まっているかなと思いながら、友朋堂書店(吾妻店)に行ってみた。シャッターが半分くらい開いていて、返品の図書(たぶん)を詰めた段ボール箱が表に積まれていた。 まだ店内に電気が…

歴史学による検証/竹島-もうひとつの日韓関係史(池内敏)

○池内敏『竹島-もうひとつの日韓関係史』(中公新書) 中央公論新社 2016.1 最近は、竹島・尖閣諸島などの領土問題が中高の教科書にも掲載されているそうだが、私はそうした教育を受けなかった。なので、2000年代になって、この問題が過熱し始めても、正直…

つくばのチョコレート屋さん

先週はバレンタインデーだったので、つくば名産のチョコレートはないものかとネットなどで探した。そうしたら、つくばみらい市(みらい平駅)に「OPERA(オペラ)」というチョコレート専門店があることが分かって、買いに出かけた。 粒タイプのチョコレート…

つくば周辺の本屋さん+友朋堂の閉店

札幌からつくばに引っ越してきて、まもなく1年になる。使える本屋さんの所在が、だいたい分かってきたので、一度「つくばの本屋さん」について書こうと思っていたら、先週、「友朋堂閉店」という衝撃のニュースを職場で聞いた。 ○友朋堂書店(閉店)※新文化…

みほとけを感じる民藝/美の法門(日本民藝館)

○日本民藝館 『美の法門-柳宗悦の美思想』(2016年1月9日~3月21日) 日本民藝館は、春が近づくと行ってみたくなる美術館。この春の展覧会は、同館の創設者である柳宗悦(やなぎむねよし、1889-1961)の美思想に焦点をあてる。もともと宗教哲学者として世に…

国旗・国歌「要請」をめぐって/学問の自由と大学の危機(広田照幸他)

○広田照幸、石川健治、橋本伸也、山口二郎『学問の自由と大学の危機』(岩波ブックレット) 岩波書店 2016.2 2015年6月、国立大学長会議で挨拶に立った下村博文文部科学大臣は、大学の入学式・卒業式での国旗・国歌の取り扱いについて「適切にご判断いただけ…

タイトルに偽りなし/京都の歴史を歩く(小林丈広、高木博志、三枝暁子)

○小林丈広、高木博志、三枝暁子『京都の歴史を歩く』(岩波新書) 岩波書店 2016.1 京都が大好きなので、関連本は定期的に読んでいるが、本当に満足できるものは多くない。印象や俗説に流されて、歴史をきちんと押さえていない記述だと、読んで損をしたよう…

花咲くフィレンツェ/ボッティチェリ展(東京都美術館)

○東京都美術館 『ボッティチェリ展』(2016年1月16日~4月3日) サンドロ・ボッティチェリ(1444/45-1510)の作品20点以上を集めた日本初の回顧展だそうだ。確かに15世紀の画家の作品を世界各地から運んでくるのは、困難を極める大事業だと思う。同時代の絵…

東大構内でフレンチ

東大の赤門周辺がきれいになったなあ、と思ってから、ずいぶん月日が経っていた。 表通りからも目立つ、赤レンガ造りの建物は伊藤国際学術研究センターと言って、株式会社セブン&アイ・ホールディングス名誉会長からの寄附によって設立されたもの。その中に…

武士とその家族/文楽・信州川中島合戦、義経千本桜

○国立劇場 第194回文楽公演(2月6日 11:00~、17:30~) ・第1部『靭猿(うつぼざる)』『信州川中島合戦(しんしゅうかわなかじまかっせん)・輝虎配膳の段/直江屋敷の段』 『靭猿』は同名の狂言を移したもの。プログラムの解説によれば、もとは近松門左衛…

東京で見る大原美術館/はじまり、美の饗宴展(国立新美術館)

○国立新美術館 『はじまり、美の饗宴展:すばらしき大原美術館コレクション』(2016年1月20日~4月4日) 倉敷には、大昔に一度だけ行ったことがある。大原美術館に行かなかったはずはないと思うのだが、全く記憶がない。新鮮な気持ちで、この展覧会を見に行…

総長の休日/鴎外「奈良五十首」を読む(平山城児)

○平山城児『鴎外「奈良五十首」を読む』(中公文庫) 中央公論社 2015.10 先だって、文京区立鴎外記念館のコレクション展『奈良、京都の鴎外』を見に行って、森鴎外に「奈良五十首」という短歌連作があることを初めて知った。展覧会では壁のパネルに、特に注…

生活給の思想/働く女子の運命(濱口桂一郎)

○濱口桂一郎『働く女子の運命』(文春新書) 文藝春秋 2015.12 2015年8月に「女性活躍推進法」が成立した。こんな無様な(と私は思う)法律が必要なほど、なぜ日本の女性は活躍できていないのか。著者はその要因を日本型雇用システムに求める。欧米社会では…

2016節分の恵方巻

節分に恵方巻を食べることは、近年、私の年中行事に定着してきた。スーパーやコンビニの販売戦略に乗ってしまったようだが、もともと巻き寿司好きなので、まあいいか。 今年は茨城県民1年目なので、オークラフロンティアホテルつくばが提供する京都・花折(…

2016年1月:行ったもの拾遺(東京)

■出光美術館 『文字の力・書のチカラIII 書の流儀』(2016年1月9日~2月14日) 多彩な書の世界を紹介するということで、冒頭から、奈良時代の大般若経(魚養経)、明恵上人の消息、徳川家康の日課念仏(南無阿弥陀仏がびっしり)など、ちょっと変わった作品…

野蛮な時代/国会開設と政党秘話(伊藤痴遊)

○伊藤痴遊『国会開設と政党秘話』上・下 国書刊行会 2015.9 伊藤痴遊(1867-1938)の名前は、彼の旧蔵書の一部を見たことがあって(東京大学情報学環図書室が所蔵)知っていた。しかし、ずっと昔の人だと思っていたので、昨年末、新刊書の棚で痴遊の名前を見…