見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

鹿、鹿、鹿/美しきアジアの玉手箱(サントリー美術館)

○サントリー美術館 『美しきアジアの玉手箱―シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展』(2009年7月25日~9月6日) シアトル美術館が所蔵する日本および東洋美術コレクションの優品約100件による展覧会。同美術館は、地質学者にして美術コレクターであったリ…

オトナの読みもの/老子の毒、荘子の非常識(大野出)

○大野出『老子の毒、荘子の非常識』 風媒社 2009.3 三井記念美術館の『道教の美術』を見てきた名残りで、読んでしまった。本書は、中日新聞に連載された名著紹介コラムをまとめたものである。「老子」「荘子」から1行程度の断章を挙げ、200字程度の解説や感…

神も仏も/牧島如鳩展(三鷹市美術ギャラリー)

○三鷹市美術ギャラリー 『牧島如鳩展-神と仏の場所-』(2009年7月25日~8月23日) 牧島如鳩(まきしまにょきゅう、1892-1975)という画家を、どう説明すればいいのだろう。ハリストス正教の聖職者としてイコン(キリスト教の神や聖人像)を描くかたわら、仏…

ゴーギャン展と騎龍観音(東京国立近代美術館)

○東京国立近代美術館『ゴーギャン展』(2009年7月3日~9月23日) 今より西洋絵画への関心が高かった頃、ゴーギャンは私の好きな画家だった。画面に色の塊をぶつけるような、鮮やかな色彩、明確なフォルムが、私の好みだったのと、南洋への憧れに共感するとこ…

マスメディアの敗北/2011年 新聞・テレビ消滅(佐々木俊尚)

○佐々木俊尚『2011年 新聞・テレビ消滅』(文春新書) 文藝春秋 2009.7 2009年春、アメリカを代表する高級紙であるニューヨーク・タイムズが破綻の一歩手前に追い込まれている、というニュースが流れた(→ダイヤモンド・オンライン 2009/03/12記事)。要する…

美食と政治/中国料理の迷宮(勝見洋一)

○勝見洋一『中国料理の迷宮』(朝日文庫) 朝日新聞出版 2009.7 いやあ、面白かった。著者の名前は初めて見る。どこかで噂を聞いたわけでもない。ちょうど読むものが切れているから、と軽い気持ちで買ってみた。そうしたら、大当たり。こういう「出会い」が…

近代の人材育成を担う/大学の誕生(下)(天野郁夫)

○天野郁夫『大学の誕生(下)大学への挑戦』(中公文書) 中央公論新社 2009.6 唯一無二の「帝国大学」vs 多様な専門学校群というのが、本書上巻で論じられた明治30年代までの状況だった。下巻では、「帝国大学」による学術の独占体制に対して、さまざまな挑…

夢に続く道/聖地寧波(奈良国立博物館)

○奈良国立博物館 特別展『聖地寧波―日本仏教1300年の源流~すべてはここからやって来た~』(2009年7月18日~年8月30日) 古来、日中交流の窓口であった港湾都市・寧波(ニンポー)には、むかしから関心があったが、初めて訪ねることができたのは、2007年の…

行き交う民族/シルクロード 文字を辿って(京都国立博物館)

○京都国立博物館 特別展覧会『シルクロード 文字を辿って-ロシア探検隊収集の文物-』(2009年7月14日~9月6日) 日曜の午後、肌を刺すような強い日差しを避けて、博物館に逃げ込んだ。本展は、ロシア科学アカデミー東洋写本研究所が所蔵する西域出土資料の…

京都学「前衛都市・モダニズムの京都」1895-1930(京都近代美術館)

○京都近代美術館 京都新聞創刊130年記念『京都学「前衛都市・モダニズムの京都」1895-1930』(2009年6月9日~7月20日) 3連休の中日、津和野を後に、京都に移動する。本展は、1895(明治28)年、平安遷都1100年を記念して、ここ京都近代美術館のある岡崎で開…

津和野小旅行:鴎外・西周旧居を訪ねる

津和野に行ってきた。森鴎外の生家を訪ねたくて、自分の中では、この数年、ずっと気になっていた宿題を、ようやく果たすことができた。小さな家だった。向かいの土産物屋のおばあちゃんが、一応管理をしているらしかったが、ガランと開け放たれて、気持ちが…

日中韓の女性たち/儒教と負け犬(酒井順子)

○酒井順子『儒教と負け犬』 講談社 2009.6 2003年に『負け犬の遠吠え』でブームを呼んだ著者の新刊。日本と同様に晩婚化の進む韓国と中国を訪ね、ソウルの「老処女」(ノチョニョ)、上海の「余女」(ユーニュイ)たちの「負け犬」事情を探る、という趣向で…

国学を離れて/「国語」入試の近現代史(石川巧)

○石川巧『「国語」入試の近現代史』(講談社選書メチエ) 講談社 2008.10 学校入試に国語(現代文)があることを、私たちは当たり前だと心得ている。しかし、これは案外、新しい伝統なのだ。高等教育機関の入学試験に現代文が頻出するようになったのは、大正…

巡回展の憂鬱/道教の美術(三井記念美術館)その2

○三井記念美術館 特別展『知られざるタオの世界「道教の美術 TAOISM ART」-道教の神々と星の信仰-』(2009年7月11日~9月6日) 上記のサイトに上がっている出品目録(総点数180点)を見て、これは大規模な展覧会だなと思った。「展示替を6回予定しておりま…

カオスを楽しむ/道教の美術(三井記念美術館)

○三井記念美術館 特別展『知られざるタオの世界「道教の美術 TAOISM ART」-道教の神々と星の信仰-』(2009年7月11日~9月6日) この夏、いちばん楽しみにしていた展覧会なので、さっそく見てきた。どうやら展示コンセプトは「何でもあり」である。展示図録…

歴史書の隠れた専門店/れきはくミュージアムショップ

○歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)のミュージアムショップ なかなか増えない「街の本屋さん」のカテゴリーに久々の投稿。最近、行くたびに感心しているのが、歴史民俗博物館(れきはく)のミュージアムショップにある書籍コーナーである。 ミュージアムショッ…

唐美人の枕/唐三彩と古代のやきもの(静嘉堂文庫美術館)

○静嘉堂文庫美術館 『唐三彩と古代のやきもの』(2009年5月30日~7月26日) 前半は漢代とそれ以前の灰陶や緑釉のやきものが中心、後半は華やかな唐三彩を取り集めた展覧会。前半で目を引いたのは、上記サイトにも画像のある、後漢~西晋時代の加彩武人。いま…

愛される人生/美人好きは罪悪か?(小谷野敦)

○小谷野敦『美人好きは罪悪か?』(ちくま新書) 筑摩書房 2009.6 立ち読みのつもりで手に取ったら、意外と面白くて、そのまま買ってしまった。どのへんにハマったかというと、第1章の「小説のヒロインはしばしば平然と美人である」という指摘。たとえば漱石…

次男と女性皇族/松本清張の「遺言」(原武史)

○原武史『松本清張の「遺言」:『神々の乱心』を読み解く』(文春新書) 文藝春秋社 2009.6 松本清張の遺作『神々の乱心』について、原武史さんが語るのを読んだのは、保阪正康との共著『対論 昭和天皇』(文春新書、2004)が最初だった。このとき、一二度『…

茶懐石の小宇宙/向付(五島美術館)

○五島美術館 特別展『向付(むこうづけ)-茶の湯を彩る食の器-』(2009年6月27日~7月26日) あまり期待せずに行ってみたら、意外と面白かった。「向付」(むこうづけ)は、茶の湯の食事「懐石」に用いる器である。私は「懐石」と聞くと、次から次へとお皿…

手塚治虫の呪縛/Pluto008(浦沢直樹)

○浦沢直樹、手塚治虫『Pluto(プルートゥ)』第8巻 小学館 2009.7 第1巻の発売が2004年9月(奥付は2004年11月)だったから、ほぼ5年をかけて完結した。あまりに長い年月をかけて進行した物語だったので、伏線がよく分からなくなってしまったきらいがある。そ…

歴史ロマン、完結/鹿鼎記8(金庸)

○金庸著;岡崎由美、小島瑞紀訳『鹿鼎記』8(徳間文庫) 徳間書店 2009.7 長編歴史ロマンもこの1巻でついに完結。最後まで、あっと驚く急展開の連続、しかも行き当たりばったりではなく、きちんと伏線が回収されているのが見事だった。揚州の乱痴気騒ぎの一…

天下大乱の光と影/鹿鼎記1~7(金庸)

○金庸著;岡崎由美、小島瑞紀訳『鹿鼎記』1~7(徳間文庫) 徳間書店 2008.12-2009.6 先々週から読み始めて、半分くらいで「しまった」と思った。既に完結しているものと思っていたら、まだ最終巻の第8巻が文庫化されていなかったのだ。激しく慌てたが、もう…