読んだもの(書籍)
〇黒田明伸『歴史のなかの貨幣:銅銭がつないだ東アジア』(岩波新書) 岩波書店 2025.3 経済史というのは、私にはやや苦手な分野なのだが、現代人の常識をくつがえす話がたくさんあって、たいへん面白かった。人類の歴史を振り返ると、政府が通貨供給を独占…
〇満薗勇『消費者と日本経済の歴史:高度成長から社会運動、推し活ブームまで』(中公新書) 中央公論新社 2024.8 本書は戦後日本の社会と経済の変化を消費者の姿から読み解いていく。「消費者」という言葉が学問の議論を超えて使われ始めるのは1920年代、さ…
〇吉見俊哉『アメリカ・イン・ジャパン:ハーバード講義録』(岩波新書) 岩波書店 2025.1 本書は、著者がハーバード大学の客員教授として2018年春学期に行った講義「日本の中のアメリカ」を活字化したものである。ちなみに2018年は最初のトランプ政権の2年…
〇岡本隆司、君塚直隆『帝国で読み解く近現代史』(中公新書ラクレ) 中央公論新社 2014.12 「帝国」をキーワードに近現代史(18世紀~現代)を捉え直してみようという対談。ヨーロッパ国際政治史の君塚先生も中国史の岡本先生も大好きなので、わくわくしな…
〇川端美季『風呂と愛国:「清潔な国民」はいかに生まれたか』(NHK出版新書) NHK出版 2024.10 「まえがき」に言う。現代に暮らす日本人の多くは、毎日風呂に入るのが当たり前だと思っている。しかしいつから私たちは毎日風呂に入るのが「当たり前」だと思…
〇吉見俊哉『東京裏返し 都心・再開発編』(集英社新書) 集英社 2024.12 2020年刊行の『東京裏返し』では、都心北部を歩いて歴史の古層を探索し、「東京についてのあまりにも自明化されたリアリティ」を「裏返し」していく実践を示した著者が、本作では都心…
〇木村幹『韓国現代史:大統領たちの栄光と蹉跌』(中公新書) 中央公論新社 2008.8 戦後、日本の植民地支配からの解放と米国の占領を経て、1948年に大韓民国が建国される。以後、60年間(本書の刊行まで)の韓国現代史を、個性豊かな大統領たちの姿を通じて…
〇白石典之『元朝秘史:チンギス・カンの一級資料』(中公新書) 中央公論新社 2024.5 『元朝秘史』という書物の存在は知っていたが、具体的な内容は知らなかった。なので「はじめに」と序章の紹介を読みながら、へえ!へえ!と唸ってしまった。この書のおお…
〇尾脇秀和『女の氏名誕生:人名へのこだわりはいかにして生まれたか』(ちくま新書) 筑摩書房新社 2024.9 同じ著者の『氏名の誕生』がとても面白くて、知らなかったこと、あるいはぼんやり気になっていたことを気持ちよく理解できたので、姉妹編の本書も必…
〇原武史『象徴天皇の実像:「昭和天皇拝謁記」を読む』(岩波新書) 岩波書店 2024.10 『昭和天皇拝謁記』は、戦後、宮内府長官および宮内庁長官を務めた田島道治(1885-1968)の日記・書簡等の記録をまとめたもので、2021年から23年にかけて岩波書店から刊…
〇木村幹『全斗煥:数字はラッキーセブンだ』(ミネルヴァ日本評伝選) ミネルヴァ書房 2024.9 「あとがき」によれば、著者は2011年から5年間「全斗煥政権期のオーラルヒストリー調査」という研究プロジェクトに関わったが、2010年代後半には、まだ多くの政…
〇上村剛『アメリカ革命:独立戦争から憲法制定、民主主義の拡大まで』(中公新書) 中央公論新社 2024.8 このところ仕事が忙しくて読書レポートが書けていなかったが、11月5日の大統領選挙より前に読み終えていたものである。現実の選挙結果のインパクトが…
〇ぴあMooK『東京の喫茶めし』 ぴあ 2024.8 東京の喫茶の名店と名物メニュー、スパゲッティ、サンドイッチ、カレー、オムライス&オムソバ、モーニング、さらにスイーツは、パフェ、ホットケーキ、プリンアラモード、あんこ、コーヒーゼリー、クリームソーダ…
〇宇野重規;聞き手・若林恵『実験の民主主義:トクヴィルの思想からデジタル、ファンダムへ』(中公新書) 中央公論新社 2023.10 宇野先生の著書は『〈私〉時代のデモクラシー』『民主主義とは何か』などを読んできたので、だいたいどのような内容が展開す…
〇藪本勝治『吾妻鏡-鎌倉幕府「正史」の虚実』(中公新書) 中央公論新社 2024.7 『吾妻鏡』は、鎌倉幕府の公式記録として1300年頃に編纂された史書で、治承4年(1180)に源頼朝が伊豆で挙兵してから、文永3年(1266)に第6代将軍宗尊親王が京都に送還され…
〇土田宏成『災害の日本近代史:大凶作、風水害、噴火、関東大震災と国際関係』(中公新書) 中央公論新社 2023.7 20世紀初頭は、世界的に大規模な自然災害が相次いだ時期だった。災害は他国にも報道され、国境を超えた義援、救援、調査研究などが整備されて…
〇安田峰俊著;田中康平監修『恐竜大国 中国』(角川新書) 角川書店 2024.6 まるで縁のなかった分野の著書だが面白かった。現在、世界で最も多くの恐竜が見つかっているのは中国なのだという。中国国内で骨格の化石が見つかり、2020年12月までに学名がつい…
〇津田正太郎『ネットはなぜいつも揉めているのか』(ちくまプリマ―新書) 筑摩書房 2024.5 著者は、2020年9月、アニメ『銀河英雄伝説』のリメイクについて「男女役割分業の描き方は変更せざるをえない気がする」云々とツイートしたところ、批判的なリプライ…
〇渡辺将人『台湾のデモクラシー:メディア、選挙、アメリカ』(中公新書) 中央公論新社 2024.5 1996年に総統の直接選挙が始まり、2000年には国民党から民進党への政権交代を実現させた台湾は、英国エコノミスト誌の調査部門が主催する「民主主義指数(Demo…
〇池田清彦、南伸坊『老後は上機嫌』(ちくま新書) 筑摩書房 2024.6 生物学者の池田清彦先生とイラストレーターの南伸坊氏の語り下ろし(おそらく)の対談。私は南伸坊さんの著作は、もう30年以上愛読しているが、池田清彦さんのことは初めて知った。生物学…
〇湊一樹『「モディ化」するインド:大国幻想が生み出した権威主義』(中公選書) 中央公論新社 2024.5 インドについては、ほとんど何も知らない自覚があったので、最近、近藤正規さんの『インド:グローバル・サウスの超大国』(中公新書、2023.9)を読んで…
〇麻田雅文『日ソ戦争:帝国日本最後の戦い』(中公新書) 中央公論新社 2024.4 日ソ戦争とは、1945年8月8日から9月上旬まで満州・朝鮮半島・南樺太・千島列島で行われた第二次世界大戦最後の全面戦争である。日本の敗戦を決定づけただけでなく、東アジアの…
〇夫馬進『訟師の中国史:国家の鬼子と健訟』(筑摩選書) 筑摩書房 2024.4 訟師とは、近代以前の中国で人々が訴訟しようとするとき、訴状の作成などを助けた者たちである。大半の読者にとって「訟師」とは初めて聞く言葉であろう、と著者は冒頭に述べている…
〇歯黒猛夫『大坂がすごい:歩いて集めたなにわの底力』(ちくま新書) 筑摩書房 2024.4 私は東京生まれで箱根の西には暮らしたことがないが、ときどき大阪の本が読みたくなる。著者は大阪南部、岸和田市育ちで、大阪に拠点を置くライター。60年以上、ずっと…
〇田原史起『中国農村の現在:「14億分の10億」のリアル』(中公新書) 中央公論新社 2024.2 著者の専門は農村社会学。20年にわたり、中国各地の農村に入り込んでフィールドワークを実践してきた経験をもとに本書は書かれている。 中国の農民とは、どういう…
〇原武史『戦後政治と温泉:箱根、伊豆に出現した濃密な政治空間』 中央公論新社 2024.1 扱われている時代は終戦の1945年から1960年代半ばまで、主な登場人物は、吉田茂、鳩山一郎、石橋湛山、岸信介、池田勇人などで、そんなに古い話ではないのだが、なんだ…
〇酒徒『手軽 あっさり 毎日食べたい あたらしい家中華』 マガジンハウス 2023.10 中華料理愛好家の酒徒(しゅと)さんの名前は、ときどきネットで拝見していた。特に印象深いのは、本書にも掲載されている「肉末粉絲」(豚ひき肉と春雨の炒め煮)の紹介を見…
〇馬伯庸;齊藤正高、泊功訳『両京十五日』(HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS) 早川書房 2023.2-3 馬伯庸の名前は、中国ドラマ好きにはすっかりおなじみであるが、彼の長編歴史小説が日本語に翻訳されるのは初めてのことらしい。遅いよ!全く!しかし待たさ…
〇萬代悠『三井大坂両替店(みついおおさかりょうがえだな):銀行業の先駆け、その技術と挑戦』(中公新書) 中央公論新社 2024.2 三井高利が元禄4年(1691)に営業を開始した三井大坂両替店は、両替店を名乗りながら両替業務にはほとんど従事せず、基本的…
〇飯島渉『感染症の歴史学』(岩波新書) 岩波書店 2024.1 コロナ下で読んだ『感染症の中国史』(刊行はもっと前)の著者の新刊が出たので読んでみた。はじめに新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な流行)の「起承転結」を振り返り、この経験を…