見に行った展覧会、レポートを書けていないものがどんどん溜まっているので、ひとことずつでも書いておく。
■東京国立博物館 特別展『運慶 祈りの空間-興福寺北円堂』(2025年9月9日~11月30日)
奈良・興福寺の北円堂から、本尊の弥勒如来坐像と両脇に控える無著・世親菩薩立像、そして、かつて北円堂に安置されていた可能性の高い四天王立像を合わせた7躯の国宝仏を一堂に展示。興福寺では何度も拝見しているが、東京に来ていただけて、本当に嬉しかった。全ての仏像を360度全方位から拝見できたのは貴重な体験。特に本尊の弥勒如来は、光背が外されていたので、なるほど、こんなお背中なんだ、としみじみ眺めた。
■三井記念美術館 特別展『円山応挙 革新者から巨匠へ』(2025年9月26日~11月24日)(後期)
後期は『藤花図屏風』の展示期間を狙って行った。根津美術館で何度も見ているけど、三井のほうが至近距離で眺めることができてうれしかった。あとは『大石良雄図』はほぼ等身大の巨幅にもかかわらず、人体図として全く破綻のないことに驚く。千葉市美術館所蔵『富士三保図屏風』は辻惟雄先生が館長時代に購入されたものだとか。あまり応挙らしくない、ぼんやり、ふわふわした感じが好き。
■國學院大學博物館 企画展『中世日本の神々-物語・姿・秘説-』(2025年10月4日~11月30日)
様々な思想・信仰・宗教と関わり合いながら変貌していく神々の様子を紹介する。そう、日本の神々は記紀神話で固定されたわけでなく、時代に応じて変貌し、さまざまな「二次創作」が試みられてきた。神道の総本山のように見られがちな同大学が、こういう意欲的な展示を繰り返している意味は大きいと思う。摩多羅神とか牛頭天王とか春日赤童子とか、大好き。
■印刷博物館 企画展示『五館連携・蔦重手引草 あれもこれも蔦重!お江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎』(2025年9月2日~11月3日)
蔦屋重三郎と当時の印刷文化を、常設展エリアのミニ展示で紹介。五館連携企画、結局、全部は回り切れなかったし、一ノ瀬圭氏描き下ろしの人物カードは、どの館もすぐに捌けてしまったみたいだった。
■国立科学博物館 企画展『学習マンガのひみつ』(2025年10月10日~11月9日)
「学習マンガ」の歴史的な変遷に注目し「マンガで学ぶ」ことの可能性について多角的に紹介する初めての展覧会。著作権的に仕方がないのだが、展示品の撮影がほぼできなかったのは残念。私が「学習マンガ」に浸ったのは、本展の時代区分でいえば「学習マンガの拡大1970年代~」だが、石ノ森章太郎ら人気作家が手掛けた「大人向け学習マンガ」がブームとなる1980年代よりは前になる。そのため、私の記憶と一致する作品はあまり出ていなかった。
■太田記念美術館 『歌川広景 お笑い江戸名所』(2025年11月14日~12月14日)
歌川広景(ひろかげ)は、浮世絵の専門家でもほとんど知られていない無名の絵師だが、近年、太田記念美術館のSNSに投稿された広景の作品が大きな反響を呼んでいるとのこと。確かに、私も広景作品を意識するようになったのは、同館のSNSの影響かもしれない。真面目な顔をした大きな雪だるま(御蔵前の雪)やら、カボチャを提灯に見立てたキツネの大名行列(王子狐火)やら、大仰にすべったり転んだりする人々、とにかく楽しいのだ。しかし活動期間は3年弱と短く、どのような人物なのか、その正体も分かっていないという。謎の絵師は写楽だけではないんだな、と思った。
■泉屋博古館東京 企画展『もてなす美-能と茶のつどい』(2025年11月22日~12月21日)
住友家は、9代当主・友聞(1787-1853)が、能をとおして武家と交流していた記録が残り、近代には15代当主・友純(春翠、1864-1926)が能を好み、能楽師・大西亮太郎と交流を持ったことで知られている。本展は、能楽と茶の湯の諸道具を展示し、住友家におけるもてなしの美学を紹介する。前半は能楽で、江戸~明治の能装束が多数。桃山~江戸の古式ゆかしい能面も出ていた。後半は茶の湯の道具だが、茶釜や砂張の建水など、金属製品が多めに感じたのは、やはり住友銅山の家業を意識していたのだろうか。
■国立公文書館 令和7年度第2回企画展・内閣文庫140周年記念『世界へのまなざし-江戸時代の海外知識-』(2025年10月11日~12月7日)
18世紀を中心に日本に来航した外国使節や輸入書籍、江戸時代を代表する文化人たちの海外研究に関する著作を紹介する。このテーマ、大好きなので、とても楽しかった。今年の大河ドラマに登場した田沼意次、平賀源内などももちろん紹介されている。長崎奉行所配下に書物改役があり、中国船が運んできた書籍を1ページずつ調べていたというのは初めて知ったかもしれない、問題がないと確認されると『舶来書籍大意書』に要約が記載され、国内での販売対象になったという。「一方で蘭書(オランダ書籍)に対して書物改めがされた形跡はありません」というのは、調査ができる人材がいなかったのかな。輸入された書籍は中島聖堂に運び込まれ、向井家が世襲で改役を務めた。この中島聖堂の「遺構大学門」の写真が掲示されており、記憶にはなかったが、唐寺の興福寺境内らしいので見ているかもしれない。久しぶりに長崎に行きたくなった。
■天理ギャラリー 第184回展『世界の仮面名品選-変身と異世界交流のツール-』(2025年10月11日~12月13日)
天理参考館が所蔵する世界各地の仮面の中から名品を厳選し、これらを「仮面の使用方法」の視点で分類して、関連資料と共に展示する。天理ギャラリー、むかしは無料だったのだが、先日、久しぶりに行ったら入館料を取るようになっていて、せちがらいなあと思ったが、こんな本格的な展示が大人600円で見られるなら文句はない。今年の夏から秋に奈良博で開催された『世界探検の旅』の仮面が、規模は小さいながら、そのまま東京に来ていた。
これは河北省に伝わる「柳翠」の面。春節に人家の門口で音曲を披露したり芸を披露したりして金品を貰い歩く「門付け」に用いられるという。え、今でもあるんだろうか、そんな風習。

これはインドのチョウ劇の仮面。実際に演じられるところを見たいわ~。京劇の宝冠(鳳冠)に似ているのも面白いと思った。

祭礼を彩る、華やかな仮面が多い中で、妙に印象に残ったのはコートジボワールの女人仮面。能面の趣きがある。

ひとまず、これで棚卸し済み!