見もの・読みもの日記

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子どものための未来/映画・羅小黒戦記2

〇『羅小黒戦記2(ロシャオヘイせんき2):ぼくらが望む未来』(2025年)

 2019年に公開された中国アニメ映画『羅小黒戦記』の第2作である。お?続編が制作されたんだ?と思ってぼんやりしていたら、日本のアニメ・映画ファンの「面白い」「素晴らしい」「大好き」という声が次々にSNSに流れてくるので、慌てて見てきた。かなり期待度を上げて見に行ったのだが、それを余裕で上回って面白かった(見たのは字幕版)。

 作品世界には、人間のほかにたくさんの妖精が住んでいる。両者はこれまで平和的に共存してきたが、あるとき、妖精たちの拠点の1つ・流石会館が襲撃され、「若木」という秘宝が持ち去られる。若木は太古から受け継がれた素材で、これを銃弾等に用いれば、非力な人間でも妖精を殺傷することが可能になるものだった。

 その頃、主人公の小黒(シャオヘイ)は、師匠の無限(ムゲン)と平和な日々を過ごしていたが、妖霊会館の幹部たちに呼び出される。無限に若木強奪の嫌疑がかけられたためだった(そうか、無限は妖精の仲間に入っているが、人間だったと思い出す)。無限の身柄は哪吒に預けられ、二人は毎日テレビゲームをして時間をつぶす。小黒は、やはり無限を師匠とする師姐の鹿野(ルーイエ)とともに真犯人探しの旅に出る。次々に二人を襲う見えない敵。息をつかせぬ戦いの描写が素晴らしい。

 鹿野はめっぽう強い武闘派女子で、ぶっきらぼうだが小黒には優しく、師匠を一途に信じている。目的のためには手段を選ばない冷酷な一面もあり、そのため小黒と衝突する。それでも最後は鹿野を助けようと必死で後を追っていく小黒、ほんとにいい子だ。幼稚園児みたいなやんちゃ坊主から少し成長して、自分の力を自覚した少年の顔が見えるようになったのが頼もしい。

 妖精たちは、無限をめぐって疑心暗鬼になり、対立する。しかし、やがて真の敵は、妖霊会館の内部に潜んでいたことが判明する。力を合わせた妖精たちと、最後は無限自ら参戦することによって、敵は撃破され、ひとまずの平和が回復する。

 以上、ネタバレを避けると曖昧なストーリーメモになってしまうが、アニメーションの原点というか、キャラクターたちの「動き」が、柔らかくも激しくも自由自在で魅力的だった。妖精世界には、拠点から拠点へ瞬間移動する方法があるのだが、その出入口が壊されてしまったため、鹿野と小黒が飛行機に搭乗する一段がある。上空で、その飛行機を襲う敵の怪獣?妖怪?(なんと呼べばいいのか)、多数の人間の乗客たちを救うために鹿野と小黒、そして二人の監視のために乗り合わせた下っ端妖精の甲と乙が奮戦する描写には、文字通り手に汗を握った。

 鹿野は、幼い頃、親代わりだった師匠を人間に殺され、怒りと絶望にがんじがらめになった状態で無限に拾われ、少しずつその心を解きほぐされて現在に至るらしい。凄惨な前半生は淡々と控えめな描写で提示される。もし人間と妖精の戦争が起きたらどちらの味方をするか?と聞かれて、小黒は元気に「対的一方(正しいほう)」(だったかな?)と答え、鹿野は「妖精」と即答する。このへんも解釈が視聴者に任されているのが、嬉しいけれど、怖い作品でもある。

 日本のアニメが世界でファンを獲得してきたように、本作も国境を越えた普遍的な価値を持っているという、日本のアニメファンの評言には同感である。共生の難しさに直面している時代だからこそ、多くの人たちに見てほしい。と同時に、本作には中国文化の伝統を強く感じたところもある。たとえば親子でも主従でもない「師弟関係」の絶対的な重要性。異能の持ち主である妖精も「修行」は欠かせないこと。権力の帰趨を左右する宝物の存在。あ、地域の拠点が「会館」というのもの中国的だ。そして「人間」と「妖精」の戦いになっているけど、武侠ものではおなじみ、門派どうしの対立みたいなものだなと思った。