見もの・読みもの日記

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盛世のミステリー/中国ドラマ『唐朝詭事録之長安』

〇『唐朝詭事録之長安』全40集(愛奇藝、2025年)

 人気シリーズの第3季。今季も面白かった! 老獪な頭脳派の蘇無名と、頑固な武闘派青年・盧凌風のバディを中心に、おなじみの仲間たちが、さまざまな怪事件を解決していく。今季は「康国的金桃」「成仏寺的哭声」「白澤的蹤跡」「諾皐記」「旗亭画壁」「天尺五」「借齢者」「盛世馬球」の8つのエピソードで構成されている。

 「康国的金桃」:盧凌風一行は、長安への帰途、西域の康国(サマルカンド)から献上された金桃を移送してくる。皇帝は金桃を臣下に分け与えるための祝宴を開くが、謎の怪鳥が飛来し、金桃を食べた人間を襲う。金吾衛大将軍の陸仝は片目を失い、長公主の護衛だった岑鷙は落命する。やがて怪鳥には、本物の鳥と、鳥を操り、自らも鳥の扮装で飛び回る人間の二種類がいることが判明する。鳥を操る怪人の正体は、西域の阿摩挪国の王子で、かつて唐の宮廷の奴隷とされ、辱められたことの復讐を志していた。正体を隠すため、鬼市で他人の顔を買ったという設定で、第1季「甘棠駅怪談」に登場した劉十七の周駿超さんが演じていたのが嬉しかった。この事件の解決後、盧凌風は雍州司法参軍に任ぜられ、蘇無名は刑獄博士(ウソっぽい職名)として従うことになる。

 「成仏寺的哭声」:第2季で秦孝白が降魔変の壁画を描いた成仏寺で怪異の噂が立つ。一方、女手一つで化粧品店を営む赤英の娘・舞陽が行方不明になってしまう。母の幸せを願いながら、その束縛を離れたい娘の葛藤という、現代的なテーマを扱っている。赤英役の楊昆さんは、昔気質の母親役が抜群に似合う女優さん。

 「白澤的蹤跡」:皇帝のもとに、明君の治世に出現するという白澤が現れたという一報が入る。蘆凌風と蘇無名、金吾衛の兵士数名、それに公主府から派遣された二名の女子(武官の李奈児とその従者)が加わり、山中に探索に赴く。夜半、怪しげな夫婦の住む寺廟に投宿するが、怪物が徘徊する気配があり、兵士たちが次々に犠牲になる。寺廟に祀られていた白澤神とは凶獣の敖天だった。さらに李奈児が上官婉児の娘で、皇帝の側近である金吾衛に恨みを持っていたことが判明する。

 「諾皐記」:さまざまな証言を積み上げて、事件の真相に迫っていく、いわば「羅生門」スタイル。登場人物の印象がどんどん変わっていき、最後は平凡な中年夫婦のいい話みたいな落ち着き方だった。

 「旗亭画壁」:詩人に憧れる阮家酒楼の主人・阮大熊は、当代の有名詩人、高達、王幼伯、冷籍を招いて酒宴を催す。高達は高適、王幼伯は王昌齢がモデルでないかとのこと。冷籍は第1季の登場人物らしいが、あまりよく覚えていなかった。

 「去天尺五」:タイトルの意味を調べたら、韋曲・杜鄠という大貴族の居住地が宮廷に近かったことに由来するらしい。本編にも長安県県尉の、万年県県尉の杜玉という官人が登場する。どちらも家系に強い誇りを持っている。しかし世の中は商人が幅を利かせ、金さえあれば悪行も裁かれない。二人は家族を傷つけた商人に復讐するが、発覚し、最後は従容と処刑される。この事件の後、蘇無名は万年県の県尉に任ぜられる。

 「借齢者」:中国古装ドラマでは、すっかりおなじみになった仵作(検死人)が主題。皇帝は、賤籍とされている仵作を救済するため、仵作大賽を開催し、上位五名を良民に引き上げることを考える。しかし、その結果、仵作たちの間に疑心暗鬼が生まれ、殺害事件が起きる。推理色強めで面白かった。

 「盛世馬球」:盔勒(クイルー)のスパイが長安に潜入しているとの情報がもたらされる(盔勒は鉄勒、敕勒と同じで北方系遊牧民族の総称)。折しも長安では、大唐チームと盔勒チームの馬球(ポロ)の試合が開催されることになっていた。盔勒のスパイ一味は、馬球のボールに火薬を仕込み、会場の爆破を計画していたが、未然に阻止された。皇帝と蘆凌風は馬球チームの一員として試合でも盔勒チームを退け、観客の熱狂を得る。皇帝が意外とスポーツマンだったのでびっくり。あと、国家の危機に臨んでは、公主がちゃんと皇帝に協力しているところがよい。この二人の権力争い、どうなるのか先が読めない(まあモデルの史実は知っているけど…)。

 今季は伝奇的なムードが弱めだったのは、少し残念。しかし、詩人に胡姫、琵琶、獅子舞、祆教徒(ゾロアスター教徒)、馬球など、唐朝風俗を次々に見せてもらえて楽しかった。いつも楽しみな盧凌風の武闘シーンは、特に序盤が見ものだった。「康国的金桃」では、なぜか(笑)槍が戻ってきたのが嬉しく、併せて剣も使う、目まぐるしいアクションを見せてくれた。シリーズ後半は司法参軍(裁判官)として裁きを行う場面が多めだったと思う。

 今季は薛環が盧凌風の下僚として本格的に活躍する。少年らしく、こらえ性のないところが、むかしの盧凌風に似ていてかわいい。情報収集役の楊稷もレギュラーになってくれるといいな。桜桃女侠も雍州府の暗探、蘇無名の護衛として大活躍だった。

 なお、今季は長安での生活拠点として、六合酥山というデザート店(アイスクリーム?)を開店、老費がその店長におさまる。そして別に家族というわけではない一同が、毎晩みんなで夕飯を食べるシーンが、微笑ましくて和むのである。