〇大倉集古館 企画展『人々を援(たす)け寄り添う神と仏-道釈人物画の世界-』(2025年11月22日~2026年1月18日)
道教や仏教の神仏や人物を描いた「道釈人物画」を取り上げ、私達人間のそばに寄り添い、邪悪を払い、願いを叶え、ある時には生きる姿勢を示してくれた神や仏の姿を紹介する。前後期で64件が展示されている(第2章まで)が、リストを見たら、ほぼ半数が個人蔵だった。
ポスターなどのメインビジュアルになっている、蓬髪(冠が髪の毛に埋もれている)の『鍾馗図』は二代葛飾戴斗の作。すごく北斎っぽいなあと思って戴斗のWikiを読んだら「画風は北斎の画法を最も忠実に継いでいる」と書かれていた。本作は端午の節句の幟(のぼり)の本絵として描かれたのだろうか、巨大で迫力がある。しかし、これよりさらに大きかったのが、伝・円山応挙筆『関羽図』。軸先を床に寝かせることで、なんとか展示ケースに収まっていた。この関羽、完全武装の鎧の上に若草色の衣を着ていて、清盛かよと思ってしまった。
展示構成は、第1章(1階)が「七福神」「関羽」「鍾馗」、第2章(2階)が「羅漢」「布袋」「観音」など、同じテーマで描かれた作品を集めている。その結果、同じ「〇〇」でも作者や作品によってこんなに違うか、という驚きがあって、楽しかった。
私が気に入った作品を挙げていくと、呉春筆『鍾馗図』。こうして見ると、そんなにトボけているわけではないのだが、葛飾戴斗の『鍾馗図』を見た後だと、あ、鍾馗様って、こんなに気が抜けていてもいいのか~と笑顔になってしまうのだ。

仙厓さんの『鍾馗図』。2匹の小鬼が鬼なのか妖精なのか、ぬいぐるみなのか、もうよく分からないが、かわいい。

これは鸞山筆『寒山拾得図』。鸞山(江戸時代・18世紀)については「浄土宗の僧。好んで絵を描いている」との解説あり。全く知らなかったので、この人を知っただけでも、本展を見に来た甲斐があった。

雪渓印『十六羅漢図』の1枚(江戸時代・18~19世紀)。羅漢がまたがっているのはイノシシだろうか? これも気になる作品だった。ネットでいろいろ探していたら、2020年に同館で開催された『日本絵画の隠し玉』という企画展(ちょうどコロナ禍だが、本当に開催されたのだろうか?)のチラシに、この作品が掲載されているのを見つけた。ああ、同館学芸部顧問の安村敏信先生が選んでいらっしゃるんだ、嬉しい。作者は山口雪渓とある。ほう、彩色の十六羅漢図もあるのかな(参考:artNIKKEI)。

実は『普賢十羅刹女像』(女房装束の十羅刹女、鎌倉時代)のような文句なしの名品も出ているのだが、むしろ個性的な江戸絵画の数々に目移りがして、楽しかった。
そして第3章(地階)を絶対にお忘れなく! 写真家・服部正実が長年にわたって追ってきた、京都や奈良、大阪、滋賀等の家々の屋根に佇む瓦鍾馗(あるいは鍾馗瓦)50件の写真パネルが展示されている。関東では見ない風習なので、関西方面に行くと、いつも気になっていたものだ。展示は、服部さんの愛情とユーモアあふれるコメントが楽しく、1件1件しっかり堪能した。この写真が全部掲載されているなら本展の図録を買っていこうと思ったのだが、残念ながらごく一部しか掲載されていなかった。調べたら『中洛外の鐘馗』『私は鍾馗瓦』という写真集が刊行されているらしい。これは欲しいが…まず近所の図書館で探してみるかな。