初日続き。中正紀念堂を出て、徒歩で国立台湾博物館に向かう。2020年の正月に来て以来なので6年ぶりになる。前回のレポートには「もっぱら建築意匠に注目」と書き残しているが、歴史系と自然科学系の融合した博物館で、展示もけっこう面白かったことを覚えている。2月の台湾旅行では立ち寄れなかったので、今回はぜひ再訪したいと思っていた。

小雨がちの曇り空だったが、土曜の午後ということで、国内外からの参観客で賑わっていた。入場券売り場で「65歳以上は割引になる。シニアか?」と聞かれた。お~そうか、2月の台湾旅行ではまだ対象外だったが、その後シニアになったので「イエス」と答えると、特に証明書の提示を求めもせず、半額料金にしてくれた。あとで博物館のサイトを見たら、学生や児童にも同様の優遇措置が設けられている。文化施策が充実していて、うらやましい。
自然系では「台湾有犀」(2025年6月17日~2026年5月31日)が面白かった。台湾で発見されたサイの化石を中心に、過去の豊富な生態系を紹介したもので、1930年代に台北帝国大学の地質学教授だった早坂一郎が発見した化石は「早坂犀(ハヤサカサイ)」と名づけられている。他にもこの博物館は、多くの日本人科学者の業績を紹介していて興味深い。
常設展「博物台湾」の「浮生台湾」セクションは人文歴史系の優品・珍品を展示する。この『藍地黃虎旗』は、1895年、日清戦争後、大日本帝国による領有に反対する軍官民が「台湾民主国」を建国し、その国旗と定めたものである。しかし、期待した諸外国の支援は得られず、台湾自立の試みは5か月で崩壊した。黄虎旗は日本軍の戦利品となって天皇に献上され、その所在は今日まで不明のままである。のちに台湾総督府は黃虎旗の複製を制作して総督府博物館に寄贈し、今日の国立台湾博物館に引き継がれているという。え、知らなかった…台湾民主国に対する評価は分かれるらしいが、大国による接収を拒否し、自立を試みて失敗する歴史、琉球を連想するものがある。

これは『大日本帝国台湾総督之印』。初代総督の樺山資紀が持ち来たり、1930年代末期まで使われたという。

他にも鄭成功の肖像いろいろとか、台湾原住民ののんびりした風俗を描いた水墨画とか、後藤新平の書(纏足からの解放を推奨する)とか、じっくり眺めたいものがたくさんあった。「諸神黄昏」というセクションには、龍山寺の内外に置き捨てられた「無主神像」が多層式の展示棚にずらりと展示されていた。2015年に271尊が同館に寄贈されたとのこと。今のところ、これは観音様、これは布袋さん、これは関羽など、分かる尊格ばかりだったが、あと10年くらいすると、もっと怪しい神サマが増えてくるかもしれない。
時間に余裕があったので、斜め向かいの土銀展示館(古生物館)にも寄っていくことにした。初めて来たときは、台湾土地銀行(前身は日本勧業銀行台北支店)の建物を利用した金融史の博物館だったのが、前回来たら恐竜展示が主になっていてびっくりしたが、私はどちらにも興味があるのでいいことにする。
恐竜の系統図展示を眺めていたら、安田峰俊さんの『恐竜大国 中国』に出て来た「馬門渓龍(マメンチサウルス)」がいて嬉しかったのだが、その上に「迷惑龍(アパトサウルス)」という、あんまりな名前の恐竜がいて笑ってしまった(ジュラシックパークにも登場した恐竜らしい)。

土銀展示館を出ると雨が降り始めていたので、傘を開いてMRTの乗り口に急ぐ。最後に台湾に来たら必ず寄る龍山寺を訪問。ちょうど夕方のおつとめの時刻で、本堂の前はお経を唱える善男善女でいっぱいで近寄れなかった。今回の旅行の最大の目的である、明日の故宮南院行きがうまくいくことを祈願して、おみくじを引いた。

そろそろお腹もすき、歩き回って疲れてきたので、台北駅に戻ってフードコートで夕食。

明日の嘉義行き高鉄の指定席券も無事に購入することができた。ちなみに初めて台湾の高鉄を利用したのは2016年で、窓口で筆談で切符を買った記憶があるのだが、今回は全て自動券売機で完了。早めにネットで予約すると半額くらいになるのだが、今回は通常価格でよいことにする。指定席を「対号座」ということを覚えた。
前日の広島日帰り出張から早起きが続いていたので、ホテルに戻ると、すぐベッドに潜り込んで寝てしまった。そうしたら、11時頃、大きな地震で起こされた。北東部・宜蘭県沖を震源とするM7.0の地震で、台北は震度4だったという。確かに久々に体験する大きな揺れで、スマホには日本語の注意喚起メッセージが届いていた。向かいの足浴店の入口付近からは、しばらく声高な話し声が続いていたが、眠かったのでまた寝入ってしまった。続く(2026/1/1記)。