見もの・読みもの日記

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台湾旅行2025年末【2日目その1】故宮博物院南院(北宋山水画)

 2日目は、故宮南院の「甲子万年」展、とりわけ、この日が展示最終日となる北宋山水画の「神品」を見るため、嘉義へ向かう。台北駅8:21発の高速鉄道で1時間半ほどの快適な列車旅を楽しみ、嘉義駅に到着した。空港のように広くて未来的な駅でびっくりしたが、外に出ると、バス案内(客引き?)のおばちゃんやお兄さんが待っていて、のんびりした雰囲気だった。毎時30分発のBRT7212系統に乗車。接続が悪くて40分くらい待ってしまったが、混んでいると乗れない場合もある(別の系統に案内されていた)ので、早めに並んで正解だったかもしれない。

 10分ほどで故宮南院に到着。しかしバス停で下りても、どっちにいけばいいのか全く分からない。とりあえず他のお客さんに着いていく。階段を上がると、ごつい要塞のような建物が見えてくる。え、あれなの?

 そう、このガラス張りの鋭角的な建物と黒い円盤を貼り付けたような建物の組み合わせがメインの展示館だった。(あまり使われていないが)「飛白館」と「墨韻館」という正式名称があることは、あとで知った。黒い円盤の間に多くの鳥が住み着いているらしく、にぎやかな鳥のさえずりに迎えられたのが印象的だった。

 ガラス張りの建物の下に入口が見えたので、入ってみるとサービスカウンターがあったので、ドキドキしながらチケット売り場の窓口に近づいた。

 実は、出発直前にこの特別展に関する日本語記事を読んだら、関係者の方が「予約がなくても空いていれば順番に入れるので、なるべく午前中に来てほしい」とコメントしていたのである。え?予約が原則なんだっけ?と「故宮南院」をググったら、AIによる概要に「参観は予約必須です」と表示される。え?!と慌てて予約サイトを覗いたら、一般の観覧券は予約できるものの、私の見たい「甲子万年」展は Sold Out になっていた。うーむ、これは無駄足になるかも、いや、そんなはずは(別の日本語の観光案内サイトには「予約は必須ではありません」とあった)と、かなり悩みながら嘉義まで来たのである。

 窓口のお姉さんは、私がどこから来たかを確認した後、英語で「Today is Free entrance day(今日は無料観覧日です)」と言って、QRコードつきのチケットを渡してくれた。予想外の事態に慌てながら「special exhibition も?」と確認したら「全て」だという。

 信じがたい幸運に感謝しつつ、展示スペースに向かう。真っ黒な外観の「墨韻館」が展示施設になっており、エントランスホールのある「飛白館」とは3階でつながっている。まずは北宋山水画の出ている2階のS203室へ直行。これは廊下の壁に下がっていたバナーである。

 展示室前の行列は意外と短く、15分ほどで中に入ることができた。パネルや動画による解説・紹介があるのを無視して奥に進むと、おお!「神品」3幅が並んでいる。しかし最前列で鑑賞するためには、左横の待機エリアで、もう一度列に並ばなければならない。ここで30~40分ほど待った。しかし作品が大きいので、待機中も遠目にチラチラ眺めることができるし、すぐ隣で高精細の動画も流れていて、退屈しなかった。なお、展示室入口には「撮影禁止」の表示があったような気がするのだが、写真や動画を撮影しているお客さんは多く、監視員もあまり気にしていなかった。私も後方から撮った1枚を小さめの画像でここに記録しておく。

 展示作品は、左から、范寛(950頃-1032頃)『谿山行旅図』、郭熙(1023-1085)『早春図』、李唐(1050頃-1130頃)『万壑松風図』。范寛の名前はあまり記憶になかったのだが、自分のブログを検索したら、『中国絵画の精髄』『中国絵画入門』など、書籍で学んではいた。巨大な岩山から視線を落としていくと、最前景の山道を小さなロバの隊列が通っていく。しかしこのロバの隊列、原品では全く認識できなかった。

 郭熙の名前は、2008年の大和文華館『崇高なる山水』展で覚えた。そして、郭熙といえば「蟹爪樹(かいそうじゅ)」だと思っていたので、展示作品の中にその独特の樹木の姿を見つけて嬉しくなってしまった(中国語の解説には「蟹爪枝」または「鷹爪枝」とあり)。

 李唐は大徳寺高桐院の『山水図』2幅の作者である。Wikipediaによると、靖康の変で金軍に連行されたと見られていたが、紹興年間末期、80歳を過ぎて南宋の臨安に現れ、高宗の画院に召されて後進の指導に当たったという。まるで小説のような人生。斧で岩を割ったような岩肌の描き方「斧劈皴(ふへきしゅん)」は、日本の水墨画にも影響を与えている。

 展示ケースに張り付くような感じで、じっくり鑑賞(あまり急かされない)したあとは、展示室内の解説パネルを読み、また作品の前に戻ることをしばらく繰り返した。この3幅を並べて視界に収めることができるなんて、乾隆帝になった気分である。

 故宮博物院のほかの展示でも見たのだが、「走入画中」というコーナーがあり、高精細画像のスクリーン前に立って、両手を広げ、身体を上手に傾けると、まるで鳥になったように、描かれた山水に没入していくことができる。操作にはコツがいる様子なので、上手い人がやっているのを横で見ているだけでも面白い。確か『谿山行旅図』と『早春図』が題材に使われていた。

 さて、ほかの展示室も気になるので、いったん離脱。最後にもう一度戻ってこようと考えていたのだが、午後に通りかかったときは、入室待ちの列が倍くらいになっていたので諦めた。この日、最後まで残っていた日本人がSNSに流してくれたレポートによれば、閉館が1時間延長され、閉館時には拍手が起きたそうである。

 別稿に続く(1/3記)。