■太田記念美術館 『鰭崎英朋』(2025年5月31日~7月21日)
月岡芳年の孫弟子であり、明治末から昭和にかけて、小説の単行本や雑誌の口絵に美しい女性たちを描いた鰭崎英朋(1880-1968)の作品を展示する。木版画、石版画、オフセット印刷など、さまざまな印刷技術も見どころ。私のブログにこのひとの名前が登場するのは、2016年の全生庵の幽霊画展が最初で、2020年に弥生美術館の展示を見て、しっかり覚えた。展示作品は、明治の小説や雑誌の口絵や表紙がほとんど。作者名は泉鏡花や柳川春葉、後藤宙外など、読んではいないけど文学史で習ったので、なんとなく懐かしい感じがする。そして英朋の描く女性の、苦しそうに寄せた眉根、自然とため息が漏れそうな口元は、文句なく色っぽい。
■府中市美術館 『橋口五葉のデザイン世界』(2025年5月25日~7月13日)
装幀を出発点として五葉の全仕事を展観し、装飾や美術という枠組みを超えた橋口五葉の豊饒なデザインの世界を紹介する。私は、2011年に千葉市美術館で見た『橋口五葉展』の印象が強烈で、自我を感じさせる女性像(よし悪しでなく、鰭崎英朋の美人画とは対極)と耶馬渓の記憶が記憶に残っていた。今回は、展示スペースの半分以上を装幀作品の紹介が占める。特に第1章『吾輩ハ猫デアル』は、下絵等の資料も多く、五葉が心血を注いだことが分かって圧巻だった。英語版や袖珍版の装幀も全て五葉なのだな。『虞美人草』も『門』『それから』も、別にこの装幀で読んだわけではないのに、やっぱり五葉の装幀がぴったり来る。『黄薔薇』『孔雀と印度女』等の絵画も見ることができたが、多くは鹿児島市立美術館が所蔵していた。五葉が鹿児島出身で、黒田清輝の遠縁にあたることは初めて知った。
■千葉市美術館 企画展・開館30周年記念『日本美術とあゆむー若冲・蕭白から新版画まで』(2025年5月30日~7月21日)
ちょうどこの時期、仕事が忙しくて、レポートを書き逃してしまったが、とにかく素晴らしい展覧会だった。特に冒頭の「江戸絵画とあゆむ」のセクションでは、主な作品に入手方法(〇〇年度購入)の説明が付いているのだが、蕭白の『獅子虎図屏風』が1993年度、若冲の『鸚鵡図』が1995年度、『雷神図』が1999年度購入などの注記を見ると、よくぞ買っておいてくれました!と拝みたくなる。「ラヴィッツコレクション」(人類学者ロバート・ラヴィッツ氏が収集した絵本コレクション)「谷信一コレクション」(東博に勤務していた美術史家)「嬉遊会コレクション」(千葉県内の美術愛好家による収集、関東文人画の優品あり)など、コレクション紹介も面白かった。
30年間の展覧会のポスターがずらり並んだコーナーは懐かしくて気分が上ったし、ロビーに流れていた、歴代館長のインタビュービデオも面白かった。辻惟雄先生、小林忠先生の話を聞けて、得をした気分。さきほど、千葉市美術館のYoutubeチャンネルに長尺版があるのを見つけた。