見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

重宝公開/遊行寺(神奈川・藤沢)

遊行寺博物館 平成20年度特別展『遊行寺の什宝-仏教美術の名品を中心に-』

http://homepage2.nifty.com/yugyoji-museum/index.htm

 神奈川県藤沢の遊行寺(清浄光寺)に行ってきた。時宗の総本山で、『一遍上人絵伝』などの寺宝、また「一つ火」と呼ばれる念仏会でも知られる。5年ほど前、逗子に住んでいたときも訪ねたことがある。特にイベントのない、普通の週末だったので、参拝客の姿も少なく、宝物館も社務所に頼んで開けてもらった。夏の盛りだったが、空調が入っていなくて閉口した記憶がある。客はともかく、展示品は大丈夫なのだろうか、と思った。もちろん、貴重なお宝は保存庫に仕舞ってあるのだろう。あまりぱっとするものは出ていなかった。

 それが、いつの間にか、立派なホームページが立ち上がり(2005/12/24正式openだそうだ。何故にクリスマスイブw)特別展が告知されている。画像は、遊行寺の重宝中の重宝『後醍醐天皇御像』だ。えっ、あのショボい宝物館にこれが出るのか? 期間中ずっと? というわけで、半信半疑で、現在の住居(埼玉県)から2時間かけて見に行った。

 『後醍醐天皇御像』は、小さな展示室のいちばん奥に掛かっていた。この絵は、網野善彦さんの『異形の王権』(平凡社,1986)以来のなじみだが、実物を見た経験は意外と少ない。わりと最近、東博か京博の特別展で見たのが初見ではないかと思う(何だっけな~思い出せない)。それにしても、よく肥えて、白くふくらかな面相である。福々しいのに猛々しい。相撲取りみたいだ。いや、異様に黒々とした髯が、ヒール(悪役)のプロレスラーにも見える。頬にほのかな紅をさしているのは、化粧なのか、画家の工夫なのだろうか。何か語りたそうに開きかけた口の中に黒い線が見えるのも、補助線なのか、鉄漿(おはぐろ)なのか、はっきりしない。頭上の冠は、どうなっているんだか。着ているものは、たぶん、天皇専用の礼服、黄櫨染御袍(こうろぜんごほう)の上に袈裟を着けているのだろう。見れば見るほど”異形”で面白い。

 このほかでは、室町時代の『羅漢図』がよかった。僧侶の足元になぜか山羊が2匹。加藤信清筆『阿弥陀三尊来迎図』も、江戸物なのによかった。脇侍の二尊が、短めの衣の裾を翻し、くるぶしまで見せているのが色っぽい。広い額、細い眉が、浮世絵美人のような顔立ちである。調べてみたら、作者は名のある仏画家だそうだ。

 時宗の上人たちの筆と伝える名号(南無阿弥陀仏)は、あまり苛烈さを感じさせないところが私好みである。伝一遍上人筆の、踊るような自由な筆画もいい。さらに、奈良・平安時代の写経がずらりと並んでいることにびっくりした。『色紙金字阿弥陀経』は紺地金泥の扉絵が美しい。料紙の上下に蝶と鳥が摺られていることから「蝶鳥経」とも呼ばれる優品である。まだまだ私の知らないお宝があるのかも。今後の展示にも期待。