見もの・読みもの日記

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仮の再会/出光美術館所蔵 茶道具名品展(大倉集古館)

大倉集古館 特別展『出光美術館所蔵 茶道具名品展』(2026年2月3日~3月22日)

 出光美術館が所蔵する名品の中から、多種多様な茶の湯の美術約70件の作品を展示する。何十年も通い続けていた出光美術館が、ビルの建替えのため休館に入ったのは2024年12月。1年ぶりにコレクションの数々に再会することができて嬉しかった。

 「茶道具名品展」と聞いて、もっぱら茶碗や茶入、釜や水指を思い浮かべていたのだが、展示品はもう少し広く、はじめに「床飾り」の掛け物が少し出ていた。二字書『行忍』(伝・兀庵普寧)は記憶になかったが、伝・牧谿の『踊布袋図』や仙厓さんの『花見画賛』の飄々とした味わいは、ああ出光らしいコレクションだ~と思って懐かしかった。

 堆朱や蒔絵の文房具に続いて、龍泉窯(南宋時代)の『青磁袴腰香炉』。たぶん何度も見ていると思うのだが、古風な紫檀枠の展示ケースに単独で収まった姿に王者の風格が感じられて惚れ惚れした。その隣は『鉄地銀象嵌雁香炉』(明時代)。室町時代には、座敷飾りとして動物のかたちの香炉が数多く輸入されており、特に鴨の香炉が珍重されたという。この鴨(雁)、お尻に花模様のような穴が開いており、そこから香炉の煙が出る仕掛けになっている。安いレプリカがあったら私の部屋にも置いておきたい。

 あと『備前緋襷鶴首花生』『伊賀耳付花生』『高取砧形花生』の3種が並んだケースも圧倒的によかった。出光の展覧会だと、備前なら備前、伊賀なら伊賀の類品がたくさん並んでしまうのだが、こういうベスト・オブ・ベストの並びが楽しめるのは、他館での名品展ならではである。私の場合、特に高取焼は、出光コレクションで魅力を知ったやきものなので、嬉しかった。

 茶入は6点出ていたが、全て蓋を外した状態で展示されていたのが珍しかったので記録しておく。蓋がないと、全く用途不明の容器に見えて新鮮だった。

 展覧会のメインビジュアルになっている野々村仁清の『色絵芥子文茶壺』は、何度見てもよい。品よく華やかで、温かみのある平和な雰囲気が感じられる。いつまでも伝えられてほしい名品。絵付けが美しいだけでなく、仁清は「ろくろの名手」だという解説が面白かった。この茶壺のなめらかな丸み、抱きかかえてみたい衝動が湧いてくる。

 2階は水指、茶釜、茶杓、香合などに続いて、真打ちの茶碗が登場。地味な『灰被天目』(茶洋窯)は、時折、底のほうにキラッと虹色の光が見えるので、万事派手な曜変や油滴よりドキドキした。珍しいと思ったのは『信楽筒茶碗』。解説にも信楽焼の茶碗は珍しいとあったが、現在は茶碗やぐい呑みも多数作られているようだ。展示品は、口縁のシャープな立ち上がりが、ちょっと楽茶碗を思わせた。最後に、近代の茶道具として、板谷波山の作品が多数出ていたのも出光コレクションらしかった。

 出光美術館、まだ具体的な再開スケジュールは提示されていないようだが、必ず再開してくれることを信じている。美術館や博物館について、あまりいい話のない昨今なので、ひたすら祈るような気持ち。