■故宮博物院
2日目は朝から故宮博物院へ向かう。士林駅でMRTを下り、バスに乗る頃から雨が降り始めた。気温は前日より低いがコートなしで問題なし。リュックをロッカーに預けて館内に入る。朝の空いているうちにお目当ての「国宝再現」を見てしまおうかどうしようか迷ったが、1階から見ていくことにした。そして、昨年と変わってなさそうな部屋は飛ばしながら進む。
【101室】「慈悲と知恵-宗教彫塑芸術」
【106室】「集瓊藻-故宮博物院所蔵珍玩精華展」
【108室】「貴族の栄華-清代家具展」
【105,107室】「アジア探検記-17世紀東西交流物語」(2018年12月20日~2019年3月10日)
始まったばかりの特集展示。17世紀の東アジアを訪れた西洋の商人や宣教師たちがもたらした珍宝、アジアとヨーロッパの交流の影響下に生まれた芸術と文化を紹介する。実は直前までこの展示に気づかず、今期は、図書文献館で開催の「プーシキン美術館展」が「国宝再現」に続く目玉かと思っていた。それならいつもより早めに見終わるかと思っていたら、とんでもなかった。面白すぎて、この特集だけで1時間以上を要した。
展示はもちろん館蔵品が主だが、海外からの出陳も多かった。見覚えのある出島商館図(彩色絵巻)は、長崎のものかと思ったらオランダ国家美術館(アムステルダム国立美術館)の所蔵品だった。オランダ人は17世紀東アジア海域の覇者として東西交流を促進し、清朝皇帝にも謁見を果たした。オランダで出版された銅版画に描かれた「中国」の風景は、かなり正確なものもあれば、トルコやインドと混じったようなものもある。
やきものの図像をめぐる東西交流は、いつも面白いと思う。この日傘をさした女性二人が佇む構図は、オランダにも例があり、日本の伊万里にも類例がある。
オランダに残るこの色タイルには、中国風の楼閣に黒人が配されていて、どこでもないパラダイスの趣き。
東西交流の時代における「東方の風情」の例として、沈士充(明人、1602-1633)の『画郊園十二景』という画帖が展示されていて素敵だった。調べたら東博が『山水図冊』を所蔵する画家であるらしい。覚えておきたい。
展示品の説明板を見ていると「故善〇〇〇…」のような漢字二文字と数字の所蔵品番号が付いていることに気づいた。「故善」は故宮伝来の善本書籍。「購善」は購入善本、「贈善」は受贈善本ということらしい。「故画」とか「故漆」「贈瓷」などもあり、この由来を見分けるのも面白かった。
【103,104室】「古人の掌中書—本院所蔵巾箱本特別展」(2018年12月23日~2019年3月10日)
ちょうどこの日から始まった展示。小さくて精緻な「掌中書」(袖珍本)の特集である。そもそも戦乱の時代には、鍾愛の古典籍を持ち運べるようにしておく意味は大きかったんだろうなあ。写真の『周礼』は、楊守敬先生が日本で購入したものだという。何故か『日本書記』『日本三代実録』の袖珍本があったり、清末の識字教科書があったりした。『乾隆南巡紀程図』は各日の行程を1冊にまとめた折帖で、江南の風景を描いた彩色の挿絵が美しかった。
【102室】オリエンテーション・ギャラリー
中国語で「古画動漫」と名づけた古画の複製品+アニメーション展示をやっている。作品は横長の長軸物が選ばれており、今期は、明・文徴明の『仿趙伯驌後赤壁図』。風景の見どころをアップにしたり、画中の人物に寝返りを打たせてみたり、けっこう面白い。日本の博物館等でもこういうコーナーが常設であればいいのに、と思う。
【204,206室】「筆墨は語る-中国歴代法書選」
2階は「国宝再現」を避けて一般展示室からと思ったら、ここもすごかった。蔡襄、蘇軾、黄庭堅、蔡京の書が並んでいて、しかも撮影自由なんて、正気の沙汰と思えない。写真は、もったいなくも蘇軾の書尺牘。私の後にいた中国人の男子二人組が、やっぱり「おお、蘇軾(su shi)!」と驚いて写真を撮っていたのが可笑しかった。
【210室】「国宝を再び─書画の精華 特別展」(2018年10月4日~12月25日)
そしてお目当ての「国宝再現」の部屋。ここだけは室内撮影禁止である。いきなり巨大な画軸『宋太祖坐像』があって驚いた。今、たまたま宋太祖(趙匡胤)についての本を読んでいて、旅行にも持って来ていたのだが、その冒頭にもカラー図版で取り上げられていた肖像である。「宋太祖」と書かれた小さな紙(肉眼で確認困難なほど小さい)が貼り付けられているが後考を待つと解説にあった。入口の看板に使われているのは『宋仁宗后坐像』(北宋4代皇帝仁宗の曹皇后)で、これは展示替えのため出ていなかったが、よく似た『宋寧宗后坐像』(南宋4代皇帝寧宗の楊皇后)が出ていた。宝冠・衣装はほぼ同じで、青い衣に一面に配された番いの鳥の文様が愛らしかった。
他に絵画は、金・武元直の『赤壁図』や宋・易元吉の『猴猫図』(サルに抱かれた猫)が印象に残った。宋人『富貴花狸』も可愛かったなあ。中文の解説には「牡丹」の下にうずくまる「花狸」と書いてあったけど、ジャコウネコだろうか。書は、唐・玄宗『鶺鴒頌』が出ており、たぶん初めて玄宗の書跡を見たと思う。癖が強くてあまり巧いと思わないのだが、墨色が黒々して意外と力強い字。
【202,208,212室】「百卉清供─瓶花と盆景画 特別展」
【203室】「心に適う-明永楽帝の磁器」
【201,205室】「土の百変化-中国歴代陶磁器展」
【207室】「紫砂風潮-伝世品及びその他器物」
2階には小さなミュージアムショップが並ぶ。どうせ最後に地下のお店に寄るからいいや、と思っていたのだが、「月刊故宮」のバックナンバーなど、地下のお店にはないものもあるので、次回はここで買い物をしようと思う。
【301室】「鐘・鼎の銘文-漢字の源流展」
【300,303室】「うつつとまぼろしの間で-故宮所蔵戦国時代から漢代の玉器 特別展」
【304室】「天香茄楠─香玩文化 特別展」
【305,307室】「古代青銅器の輝き-中国歴代銅器展」
【306,308室】「敬天格物-中国歴代玉器展」
【302室】「南北故宮 国宝薈萃」
私が行ったときは『肉形石』と白玉の『玉園蔬図筆筒』が出ていた。『翠玉白菜』は台中フローラ世界博覧会で展示中とのこと。また1/7から『肉形石』もオーストラリアでの『故宮博物院珍宝展』に出品されるそうである。
見ていない部屋もあったのだが、だいたいひとまわりできたのが午後2時。お腹がすいて集中力が落ちてきたので、そろそろ切り上げることにした。一時退出して食事をすることはできるのだが、1階のカフェはすごく混んでいるのである(私が退出したときも並んでいた)。次回は軽食を用意しておいて、ロビーか庭でそっと食べるのがいいかもしれない。
雨は止んでいたが、いつまた降り出してもおかしくない空模様。とりあえずバスで士林駅に出る。バス停の前に美味しそうな上海風包子屋さんがあったので、我慢できずに2個購入。駅前のベンチで昼食にする。
■淡水老街、紅毛城
士林からMRTで40分くらいの淡水に向かう。淡水は台北市北部の港町。私は15年くらい前に初めてひとりで台湾に来たときも淡水に足を延ばしたことがあり、それ以来になる。 大きなターミナル駅で下り、淡水老街と呼ばれる道を歩き始めた。小雨がパラつき、海風も強い生憎の天気だが、観光客の姿は多い。食べ歩きのお店に混じって木工芸品のお土産店が多いことは、かすかな記憶に一致する。海鳥も雨を避けて休んでいた。
前回も来た紅毛城を見学。1628年、スペイン人により建設され、オランダ人が再建し、イギリス領事館としても使われた。実は台湾に現存する最古の建築でもある。イギリス領事館部分は当時の内装や家具も残っており(復元?)クリスマスの飾りつけがされていた。
再びMRTで台北市内へ。士林夜市に寄るつもりだったが、雨が強くなってきたので、台北駅のフードコートで夕食にした。
(12/29記)