見もの・読みもの日記

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歳月と人生/中国ドラマ『八千里路雲和月』

〇『八千里路雲和月』(中央電視台、愛奇藝、2026年)

 抗日戦争を背景としたドラマなので、日本人には受けないだろうと思ったが、導演が『軍師聯盟』や『覚醒年代』の張永新氏で、出演者にも好きな俳優さんが多かったので、試しに視聴してみたらハマってしまった。

 物語の始まりは1937年8月の南京。国民党の将校である張雲魁は、87旅団の旅長に任じられ、父の張汝賢(張太爺)と身重の妻・丁玉嬌を残して出征した。その頃、上海郊外のある村では、料理人の孟万福が、婚約者・韓小月との結婚を翌日に控えていたが、国民党の兵士たちに拉致される。彼らは、足りなくなった兵の数を拉致した民間人で補充していたのだ。

 87旅団に着任した張雲魁は、孟万福(偽名の孔二砲を名乗っていた)が正規の兵士でないことを知るが、自分の勤務兵に留め置く。やがて日本軍との戦闘、淞滬会戦(第二次上海事変)が激化し、87旅団は柳鎮で全滅する。その直前、張雲魁は伝家の短刀を万福に託し、南京の父と妻に自分の最期を伝えてくれるよう依頼する。

 万福は南京の張家に辿り着き、旅長の最期を伝えるが、玉嬌は信じない。ある日、上海の野戦病院の様子を伝える新聞の写真に、張雲魁らしき姿を見つけて、上海に確かめに行くと主張する。そこで、玉嬌は義父を連れて上海へ、万福は婚約者・小月の待つ武漢へ旅立とうとするが、連絡船が日本軍の砲撃に遭い、万福は玉嬌らとともに上海に向かうことになる。

 上海では日本軍との衝突が続いており、激しい市街戦の中、玉嬌は万福の助けで男児(月明)を産み落とす。その頃、戦場で九死に一生を得た張雲魁は、上海の野戦病院で手当てを受けたあと、南京に帰っていた。南京事件(1937年12月)に巻き込まれるも、脱出して、父と妻が避難しているはずの武漢に向かう。

 玉嬌らが上海で身を寄せたのは、張雲魁の弟・雲旗のところだったが、雲旗とその妻は、羽振りのいい日本人に取り入っていた。硬骨漢の張太爺は、息子に腹を立てて騒ぎを起こしたため、投獄されてしまう。万福と玉嬌は、民族資本家の田家泰に助けを求め、これがきっかけで、万福は田家泰邸で住み込みの料理人となり、玉嬌らを実の家族と偽って養う。玉嬌は田家泰のために本を朗読する役目をもらう。しかし、穏やかな日々も束の間、日本人による圧力が田家泰にも伸び、田家泰は民族の誇りを守って自殺。玉嬌らは再び路頭に迷うことになる。

 その頃、万福の婚約者・小月は87旅団の全滅を知り、万福を弔った後、従軍看護婦を志す。張雲魁は軍内では「死んだ者」と扱われ、一兵卒として遊撃隊に参加し、抗日の戦いを続ける。父と妻が乗ったはずの武漢行き連絡船が日本軍の砲撃で沈没したことを知って絶望するが、小月に助けられる。以後、二人は行動をともにし、徐々にお互いを大切に思うようになる。

 上海の玉嬌は共産党の抗日活動に共鳴し、それを手伝い始める。1941年12月8日、日本軍による上海租界占領を見た張太爺は絶望して投身。玉嬌、万福の抗日の決意はさらに固まる。1943年の中秋節、共産党新四軍に接触するため、江南地方の海文に赴いた玉嬌、万福そして月明は、張闘鬼将軍と張太太、すなわち張雲魁と小月に出会う。4人は数奇な運命を受け入れ、自らの選択も元のパートナーの選択も肯定する。

 1944年春、張雲魁は文橋鎮の戦いに出撃し、万福はその兵站を支援した。戦いは勝利したが張雲魁は戻らなかった。1945年8月、抗日戦争は終結。漢奸の疑いを受けて投獄されていた万福が、玉嬌、月明と再会したのは9月の中秋節のことだった。

 こういう起伏の多い長丁場の中国ドラマは大好きなので、楽しかった。史実どおり日本軍は破れるし、共産党が正義なのはお約束だが、そんなことより、この激動の時代に巻き込まれた人々の「情感」が味わい深い。ドラマの中だけでさえ8年も続いた戦争、誰にも人生があり、過ぎていく歳月を描くのに、毎年の中秋節が巧く使われていた。

 丁玉嬌を演じた万茜さんは、序盤の若妻役は年齢的に合っていないようにも思ったが、その後の苦難に立ち向かう姿には、彼女ならではの説得力があった。企業家にして謎の文化人・田家泰(于和偉)と、「ドン・キホーテ」の朗読を通じた情感の交流を描いていたのもよかった。畢彦君さんの張太爺は、旧時代の文人の雰囲気を濃厚に漂わせていて、ああ、この時代の中国には、まだこうしたおじいちゃんがいたんだな、と感慨深く思った。万福(黄澄澄)は、一緒に投獄された機会に、張太爺から文学や歴史の基本を教えてもらい、本当の息子にように可愛がられるのである。中国では、料理の技術はどんな状況でも身を助ける、というのも面白かった。

 タイトル「八千里路雲和月」は岳飛の「満江紅」の一節である。オープニングは「満江紅」全文を、アップテンポな曲に乗せて児童合唱団に歌わせていて、とても気に入っている。