〇根津美術館 企画展『唐絵:中国絵画と日本中世の水墨画』(2025年7月19日~8月24日)
日中間の交流は中世に入ると再び盛んとなり、院体画や水墨画の名品が日本にもたらされた。「唐絵」と呼ばれたこれらの作品は、足利将軍家をはじめとする武家の間で尊ばれ、やがてそれらに倣った和製の唐絵も多数制作されることとなる。館蔵コレクションの中から、中国画や日本中世の水墨画といった唐絵の名品をまとめて紹介する。
冒頭には「『唐絵』の源流」と題して、伝・李安忠筆『鶉図』、伝・銭選筆『梨花小禽図』など華やかな作品が並んでいた。馬麟筆・理宗賛『夕陽山水図』も。理宗の文字はあまり巧くないなあと思う。伝・夏珪筆『風雨山水図』は、遠景の山も、傘を差した人物が渡ろうとする近景の橋も、ぼんやり墨がにじむような筆遣いで、雨中の景色なんだなあと納得する。牧谿筆『漁村夕照図』もそうだが、日本人好みの水墨山水は、たいがい空気が湿潤である。
次いで「明時代の『唐絵』」は数は少ないが、知らない作品も多くて面白かった。伝・夏永筆『楼閣山水図』が好き。中国絵画はここまで(13件)で、以下は、日本で描かれた「唐絵」が、いくつかのセクションに分かれて並ぶ。伝・狩野元信筆『四季花鳥図屏風』は、とにかく愛らしい。鳥たちのにぎやかな囀りが聞こえてくるし、墨画淡彩なのに色も見えてくる。『林檎鼠図』の解説だったか、元信は小田原に工房を持っていたとあったのが気になったのでメモしておく。小田原を訪れたこともあると考えられるのが、雪村周継。作品は『龍虎図屏風』1件のみだったが、大作でうれしかった。ねばりつくような波頭、トボけた龍の顔、風にしなる竹など、巧いのか下手なのか、よく分からないが、とにかく魅力的なのが雪村。
関東の水墨画にも、写生風景画っぽい仲安真康の『富嶽図』や、中国画を模倣した祥啓の『人馬図』(元時代の馬図が原図と想定)など、実はおもしろい作品が多数あることが分かった。
展示室6は「涼みの一服」。竹花入「銘:唐よし」は今季のテーマに合わせたのかもしれないが、太い竹を、豪快に鉈で斜めにぶった切って、花入れにしたもの。武将・蒲生氏郷の作のというのが、いかにもそれらしい。
1階のミュージアムショップを覗いたら『中国絵画・中世絵画』という新刊のコレクション図録が出ていたので、もしや、と思って確認したら、中国絵画は板倉聖哲先生が執筆されていた。実は展示室のキャプションに「〇〇作と言われているが、画風を検討すると、△△時期の◇◇の系統に近い」みたいな、プロ中のプロを感じさせる解説が複数あって、へえ~勉強になる、と思っていたのである。もちろん図録は買って帰った。