見もの・読みもの日記

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日中の花鳥画もあり/鏡の魔力+若き日の雪舟(根津美術館)

根津美術館 コレクション展『鏡の魔力 村上コレクションの古鏡』&特別企画『若き日の雪舟 初公開の「芦葉達磨図」と拙宗の水墨画』(2016年5月26日~7月10日)

 展示室1では、平成22年(2010)に村上英二氏より寄贈された中国古鏡コレクションから約60件の名品を展示する。同氏は、明治15年に創業し、鏡製造・バックミラー製造等、光学ガラス分野の事業を展開している村上開明堂の取締役相談役である。2015年の『動物礼讃:大英博物館から双羊尊がやってきた!』でも青銅器と一緒に多数の銅鏡が出ていたが、村上コレクションにスポットを当てるのは初めての企画だと思う。

 だいたい時代順かつ文様の種類でグループをつくって並べられていた。図録『中国の古鏡』(2011.2 ※今回購入)で西田宏子さんは「唐時代の鏡に魅力的な作品が多く見られます」と書かれているが、私はむしろ、もっと古い時代の鏡が面白かった。確かに唐時代の鏡は華やかである。天馬・鳳凰・神仙など、何を表現しようとしたのか、よく分かる。正倉院の宝物にも似ていて、なじみやすい。それに比べると、戦国~秦漢の鏡は、明らかに異質な美意識に支配されている。動物や神仙の姿もあるのだけれど、パターンの繰り返しや数学的な対照・均衡が大事だったんじゃないかと思われる。

 それにしても、見たことのない個性的な文様がたくさんあって、引き込まれた。また保存状態の非常にいいものが多くて、文様の芸の細かさが分かりやすい。中国の鏡って、こんなに面白かったのか、と再認識する貴重な機会だった。なお、根津美術館ツィッターを見ていたら、室町時代の鏡を「磨いてみた」状態の写真があって、いまの鏡と全く遜色ないくらい、ちゃんと風景が映っている。

村上開明堂・創業120周年「中国古鏡展」

 展示室2では、米国スミス・カレッジ美術館所蔵の『芦葉達磨図』(拙宗の印あり)が日本での修復を終えたことを記念して初公開。江戸時代に制作されたこの模本(東博所蔵)もあわせて展示されている。岡山県立美術館の『出山釈迦図』(拙宗/等揚の印あり)も並んでいて、足や衣文の表現に通じるところがあるというけど、正直、よく分からない。東博の『四季山水図・夏景』や京博の『四季山水図巻』(山水小巻)が見られたのは、得をした気分だった。

 展示室5が「花と鳥の絵画」特集で、なんと国宝『鶉図』(伝・李安忠筆)が出ていた。王者の風格あるウズラである。伝・徽宗筆『紫陽花水禽図』は明代の作と推定されているが、徽宗画と同様、漆による鳥の目の盛り上げが認められるというのが面白かった。細い枝にぶらさがった鳥の体勢が若冲ぽかった。この作品、表具もウサギの連続柄でかわいい。『柘榴叭々鳥図』も好きで『瓜虫図』も好き。銭維城筆『秋草図』は、やわらかな色づかい、穏やかな構図が続く図巻。ちょっと椿椿山を思い出す。「乾隆御覧」の印がポツンと押されていた。この展示室、とってもたのしい。

 展示室6は「雨中の茶の湯」。蓮葉形の釜、蟹の形の蓋置、亀の香合、それに熊川雨漏茶碗と、雨と水にこだわった道具選び。床の間にはめずらしく軸物がなくて、竹の花入だけが掛かっていたのも、雨の季節を思わせた(湿気が多いと紙は出せない)。雨の音を聴きながら、こういう茶室に籠るのもいいだろうなあと空想した。