○サントリー美術館 特別展『国宝 三井寺展』(2009年2月7日~3月15日)
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バレンタインデー直前の休日に、サントリー美術館のある東京ミッドタウンに行った。すると、吹き抜けのエスカレーターの上に黄不動尊(彫像)の巨大なバナーが吊るされ、オシャレなブランドショップと行き交う買い物客を見下ろしている。なかなか奇異な光景だった。
本展は、滋賀の三井寺(みいでら)と中興の祖(あ、開祖ではないのか)智証大師円珍ゆかりの寺宝・名宝を紹介するもの。会場の冒頭では、そのバナーにもなっていた黄不動尊(彫像、平安時代)がお出迎え。ジャストサイズの展示ケースが窮屈そうだった。ぎりぎりまで肉迫できるのは、ありがたいけど畏れ多い感じもする。そのまわりを、特徴的なオニギリ頭の智証大師坐像(彫像、画像)が、三つ子か四つ子のように取り囲んだところは、失礼ながら微笑を誘われる。
円珍さんは、仁寿3年(853)に入唐、天安2年(858)に帰国した(→年譜)。この入唐の足跡を示す文書が三井寺にきちんと保存されているのはすごい。地味な展示品だが、私はいちばん感激した。『越州都督府過所』は、越州(いまの紹興)の役人が円珍に発した「過所」(通行手形)。文書を発給した無名の地方官は、まさか自分の仕事が、千年を経て異国・日本に残るとは思わなかったろうなあ。「驢両頭」とあるのでロバ2頭を連れていたと分かり、「丁満年伍拾」というのは、調べてみたら、日本から同行した訳語(通訳)らしい。意外と高齢だな。「今欲略往両京五臺山寺」とあるので、山西省の五台山巡礼も志していたようだが、これは実現しなかった。また、円珍に『感夢記』という著作があることは初めて知った。在唐中、夢でいろいろな人物に会っている。面白いひとだ。
仏画は名品揃い。嬉しい再会だったのは、和歌山・竜光院の『伝船中湧現観音像』。眉根を寄せた独特の表情、截金(きりがね)の美しさはまさに完璧。初見で最も印象的だったのは、個人的な好みで、室町時代の『鎮宅霊符神像』。長髪・道服(?)の小太りのおじさんが、オモチャのように小さな玄武(蛇の巻きついた亀)をじっと見つめている。なんなんだ、これは。
仏像・神像はとにかく数が多い。狭い展示室に、なんだか観客の数より多いんじゃないかと思った。新羅明神坐像は、白塗りの面に赤い唇、垂れ目の金目が異形すぎて怖い。朝鮮の仮面ふうである。隅に置かれた奈良博のわんこ(獅子)、高麗時代の梵鐘(三井寺蔵、側面の天女の浮き彫りが美麗)もお見逃しなく。
第二展示室でお目にかかれる如意輪観音菩薩坐像は、ロココの貴婦人のように、ゴージャスな宝冠を頭上に高々と戴く。西国三十三所14番札所・三井寺観音堂の秘仏ご本尊だそうだ。ええ~ここでご朱印をいただきたかったなあ。三井寺のホームページによれば、大きな宝冠は後世のもので「本像には荷が勝ちすぎるようにも思われます」と、困惑気味なのが微笑ましい。
桃山時代の屏風、近世の浮世絵、フェノロサ関係資料などもあり。ただ、あらためて展示替リストを見なおすと「大阪・福岡会場のみ」となっているものが多くて、関東人としては、ちょっと悔しい。いや、かなり悔しい。
■三井寺(天台寺門宗総本山園城寺):公式サイト
http://www.shiga-miidera.or.jp/
■天台寺門宗:公式サイト
http://www.tendai-jimon.jp/