〇出光美術館 『茶の湯の床飾り:茶席をかざる書画』(2023年4月22日~5月28日)
出光美術館は、この展覧会から事前予約が不要になった。やっぱり、好きな時間にふらりと入れるのはありがたい。今回は五島美術館とここをハシゴしたので、特にそう思った。本展は、茶の湯や煎茶においてどのような書画が掛物として茶席を飾ってきたかを、同館コレクションを中心に紐解く試みである。
冒頭には、東山御物でもある牧谿の『平沙落雁図』。私のブログでは、2016年の「水墨の壮美」以来になる。何が描いてあるのか、ほとんど分からないような画面だが、目を凝らすと、無数の雁が列を連ねて飛ぶ様子や、それを見送る数羽の地上の雁たちが見えてくるのだ。牧谿はもう1点、黒い羽根がもこもこでふさふさの『叭々鳥図』も。その隣り、伝・夏珪筆『瀑布図』(南宋~元代)は、黒い岸壁を白い瀧がまっすぐな帯のように下っている。その前方に木の枝が張り出しているようだ。2020年にも見ているのだが、全く記憶になかった。さらに隣りは、伝・用田筆『栗鼠図』(元代)。リスのしっぽがふわふわでかわいい。用田は、松田の弟子だという。木の下にタケノコが書き添えられていて、筋目描きっぽいと思った。
壁沿いの展示ケースの冒頭には、毛倫筆『牧牛図』(元代)と伝・牧谿筆『寒山拾得図』(南宋末~元初)。この寒山拾得は、額が後退して、おじさんみたいな風貌で、しかも寒山は衣の前を思い切りはだけていた。宋元の絵画はだいたい以上で、あとは日中の禅僧の墨跡。単立のケースには、龍泉窯の青磁香炉、胡銅の花生、唐物茶壺などが出ていたので、もし自分が茶室を持っていたら、床の間には何と何を取り合わせたいかをいろいろ思い描いた。やっぱり墨蹟に青磁が優勝じゃないだろうか。
一段低くなったスペースには、参考展示で酒井抱一の『八ッ橋図屏風』。根津美術館の光琳筆『燕子花図屏風』をさらに思い切ってデザイン化・パターン化したような作品である。
第2室から第3室にかけては、日本の水墨画と一行書。絵画は、雪舟(破墨山水図)、相阿弥、周文に加え、光琳の『蹴鞠布袋図』も。参考で、伝・光琳筆『芙蓉図屏風』という作品が出ていて、黄・緑・黒(紫?)は古九谷の色取りだなあ、と思った。奥のミニコーナーは「茶の湯と物語」と題して、『酒呑童子絵巻』をテーマにした茶道具の取り合せを楽しむ。宗入には「鬼の頭」という黒楽茶碗、道入(ノンコウ)には「酒呑童子」という赤楽茶碗があるのだな。
続いて「近代数寄者の新たな趣向」の章では、佐竹本三十六歌仙絵『柿本人麻呂』を展示。おお、これも久しぶりだ。へなっとした烏帽子と、衣に埋もれた感じがかわいい。そして、意図したわけではなかったが、五島美術館に続いて、高野切第一種と継色紙(むめのかを)をハシゴすることになった。個人的には、高野切第一種も継色紙も、出光コレクションのほうが好き。最後は「煎茶の掛けもの」で、なんとなく見たような山水図があると思ったら、青木木米の作品だった。木米作の茶碗や急須、それに木米の肖像(田能村竹田『木米喫茶図』)も出ていた。
ロビーの一角に設けられた茶室「朝夕菴」の展示も、最近、忘れずに見て行く。今季は床の間に仙厓の一行書を掛け、その左右に堆朱屈輪の香合と青磁の花入を飾る。窓際に置かれた八ッ橋蒔絵の硯箱も、この季節に合っている。もう少し近づいて見られると嬉しいんだけどなあ。