見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2階は南蛮美術/コレクションの精華(神戸市立博物館)

○神戸市立博物館 第100回特別展『コレクションの精華-つたえたい美と歴史』

http://www.city.kobe.jp/cityoffice/57/museum/main.html

 2階南蛮美術室に入ると『泰西王侯騎馬図屏風』が待っていた。う、嬉しい~。私は、極言すれば、この1点を見るために、東京から神戸まで遠征してきたのである。簡単に注釈しておくと、もと会津若松鶴ヶ城の大書院の襖だったもので、サントリー美術館が所蔵する屏風と一対をなす。昨年、サントリー美術館(関西は大阪市立美術館)の『BIOMBO/屏風 日本の美』展で、同館蔵の『泰西王侯騎馬図屏風』を見たときも大感激だった。しかし、私と同様の体験をした人たちに、この際、はっきり言っておこう。絵画としては、こっち(神戸市立博物館蔵)のほうが数段上である。嘘だと思ったら、画像を探して見比べてほしい。

 サントリーの屏風は、4人のうち3人が、王冠をいただき、王笏を手に持つ儀礼的な姿で描かれている。威厳はあるが、生硬さが抜け切れない。ところが、こっちは4人とも抜き身の剣を振りかざし、馬も大きく身を躍らせている。やくざの出入りみたいに物騒な図だ。左から、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世、トルコ王、モスクワ大公、タタール汗と見られているそうだ。思い切って近寄ってみると、大画面のスクリーンに吸い込まれるような迫力である。旧蔵者・池長孟氏(南蛮堂)の名前を刻んだ表具にも注目。双魚文の裂(きれ)が愛らしい。ひとつ疑問は、ローマ皇帝の剣に刻まれた「SNOPR」って何の意味なんだろう?

 その隣りが、教科書でおなじみ『聖フランシスコ・ザヴィエル像』。茨木市旧家の「開けずの櫃」から見つかったのは大正9年(1920)というから、意外と新しい。狩野内膳筆『南蛮屏風』は、夢の1場面のようで、なんとも楽しい屏風だが、黒マントのイエズス会士に混じって、灰色のフードつきの長衣に裸足のフランシスコ会士が見える、という指摘には驚いた。ほかにも、着物姿にロザリオを下げた老人とか、日本人のように慇懃に腰をかがめる洋装の西洋人とか、細部の描写に謎が多くて興味深い。

 続く江戸絵画も面白かった。同館の「名品撰」では「長崎系絵画」と呼ばれているが、明清絵画の影響を強く受け、写実的で濃密な色彩を特徴とした「黄檗絵画」が中心である。前回も思ったんだけど、鶴亭という画家の作品、若冲に似てるなあ。『四君子・松・蘇鉄屏風』の菊図なんて、墨の色がそっくりだと思う。また、この展覧会のポスターになっている(公式サイト参照)前足を舐めるトラは、大友月湖の『群虎図屏風』から取られているのだが、一目見て”プライス・コレクションの『猛虎図』!?(ただし裏焼き)”と思ったのは私だけだろうか(お手本は朝鮮絵画?)。

 出島商館長の一家を描いた川原慶賀の『ブロンホフ家族図』は、類似の作品を見たことがあるが、妻子を同行した西洋人は、文化13年(1816)に来日したブロンホフが初例で、以後、紅毛碧眼の西洋女性を描いた絵画が多数出回ったという。それから、文化10年(1813)、ゾウを載せた洋船が長崎に入港したが、実はイギリス東インド総督ラッフルズが、出島を乗っ取るために差し向けたものだったという。面白いので、ここに書き留めておく。さらに続く。