見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2025年5-6月展覧会拾遺

すみだ北斎美術館 企画展『北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで』(2025年3月18日〜5月25日)

 大河ドラマ『べらぼう』人気を当て込んでか、今年は浮世絵や江戸文化をテーマにした展覧会が多い。私は、もともと浮世絵にあまり関心はないのだが、今年だけはぜんぶ見てやろう!とひそかに決めている。本展は、江戸のメディア王と評され、北斎の才能に早くから目をつけていた蔦屋重三郎をはじめ、浮世絵師と版元の関係を取り上げる。蔦屋重三郎には、初代没後に婿養子になって店を継いだ二代目がいたことを詳しく知る。北斎とのかかわりは二代目のほうが強いそうだ。ドラマでおなじみ、鶴屋、西村屋も詳しく紹介されていた。

東京都立中央図書館 企画展示『情報、江戸を駆ける!蔦屋重三郎が生きた時代の出版文化』(2025年1月24日~5月25日)

 「蔦屋」の店先を小さな模型で再現し、出版関係者の経歴をパネルで紹介するほか、江戸のマスメディア・瓦版、浮世絵や見立番付、江戸のガイドブックやハウツー本も紹介。情報量豊富な見立番付がおもしろかった。『和漢軍書番付』では、東(日本)の大関は「太平記」、西(中国)の大関は「通俗三国志」である。「通俗隋煬帝軍談」とか「明清軍談」とか初めて聞くが気になる書名もあった。鰻屋の番付『江戸前大蒲焼』の行司「大和田」は、江戸前うなぎの代名詞らしい。うちの近所にも一軒ある。

たばこと塩の博物館 特別展『浮世絵でめぐる隅田川の名所』(2025年4月26日~6月22日)

 江戸の人々にとって、とても馴染み深い隅田川。本展では、周辺の寺社、花名所、料亭など、浮世絵に描かれた隅田川の名所を紹介し、約150点の浮世絵を展示する。同館は、渋谷区から墨田区に移転して丸10年となるが、大蔵省煙草専売局の工場が隅田川沿いに建てられるなど、隅田川はたばこ産業にとっても重要な川であるため、移転した2015年以降、隅田川に関わるさまざまな資史料を収集してきたという。これは初めて知ったが、ちょっと嬉しい。でも、いま私が住んでいるのは隅田川下流だが、本来、隅田川の名所といえば、両国・向島・三囲神社など、東京北部なのだな。明治の浮世絵に、隅田川の水害を描いたものがあることは初めて知った。

町田国際版画美術館 企画展『日本の版画1200年-受けとめ、交わり、生まれ出る』(2025年3月20日~6月15日)

 日本現存最古の印刷物である『無垢浄光大陀羅尼経(法隆寺百万塔陀羅尼)』から、仏教版画、絵手本や画譜、浮世絵、創作版画、新版画、戦後版画、現代版画へと連なる約240点を収蔵品から厳選して紹介する。単に「日本の版画」を展示するのではなく、そのイメージや技術の源泉となった海外作品を並べて、文化交流の視点で日本の版画1200年の歴史を辿る構成なのが意外で面白かった。日本文化の粋みたいに言われがちな版画も、決して世界から孤立した状態で生まれたものではないのだ。

日本民藝館 特別展・所蔵作品一挙公開『棟方志功展I 言葉のちから』(2025年6月14日~7月27日)

 3期にわたって開催される棟方板画大規模公開の特別展。第1章の今期は、詩人たちの詩歌や物語から着想した作品を紹介する。チラシ・ポスターになっているのは、キツネとオオカミ(ヤマネコ?)のような動物のコンビに「夕されば狩場明神あらわれむ 山深うして犬の聲する」という和歌が書きつけてある。これは2階の大展示室で見つけた。「流離抄柵歌 吉井勇」というキャプションの付いた八曲一双の屏風で、1扇に2枚ずつ、和歌と挿絵の版画が貼ってあった。吉井勇か~と納得してしみじみ眺めた。ほかに私の気に入った歌は「あだ名して樊噲と呼ぶ極道も しみじみとして遊ぶ秋の夜」「寂しければ酒ほがいせむ今宵かも 彦山天狗あらはれて来よ」など。谷崎潤一郎の和歌に寄せた屏風もあって、うーん吉井勇ほどおもしろくないなと思ったが、以下の1首はとかった。「願はくは空に人工衛星の翔(あまかけ)る日に生きてあらばや」と書いて、仏と天女の絵を添える。版画の間に、ときどき棟方の水墨画があって、にじみやぼかしを活かした墨の色に惹かれた。