見もの・読みもの日記

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アイスショー”notte stellata 2026”2日目公演

羽生結弦 notte stellata 2026(2026年3月8日、16:00~)

 今年も幸いなことに、アイスショーnotte stellataのチケットを取ることができたので、2日目(日曜日)の公演を見てきた。3年連続の現地観戦なので、この時期の仙台地方が寒いことは承知の上で、しっかり防寒対策をして出かけた。

 2024年は大地真央さんとのコラボの「カルミナ・ブラーナ」、初披露だった「ダニー・ボーイ」。2025年は野村萬斎さんとのコラボで「MANSAIボレロ」と「SEIMEI」。いったい、これらを超える企画があり得るのか?と思っていたら、今年のゲストは、東北ユースオーケストラだという。私は寡聞にしてその存在を知らなかったが、2011年の東日本大震災直後に坂本龍一氏の呼びかけで誕生し、岩手・宮城・福島の小学生から大学生までが所属して、今日まで活動を続けている団体だそうだ。なるほど! 東日本大震災を記憶し、被災者に寄り添うというテーマはひとつでも、毎年、異なるアプローチを見せてくれるのが、とても嬉しい。

 ゲスト・スケーターは、ハビエル・フェルナンデス、ジェイソン・ブラウン、シェイリーン・ボーン・トゥロック、宮原知子、鈴木明子、田中刑事、無良崇人、本郷理華、フラフープのビオレッタ・アファナシバで昨年と変わらず。今年はちょっと前に、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックで現役最高峰の選手たちの演技を観ていたので、やっぱり引退後だとスピード感や躍動感が物足りない出演者もいた。しかし今年は誰も転倒がなくて、それぞれ自分のプログラムをしっかり演じ切っていたし、群舞の「リトル・ブッダ」(坂本龍一さんの曲)もよかった。個人プロで印象に残ったのは、シェイリーンの「La Cumparsita」。リンク上に持ち込んだ椅子に白いシャツを着せて(?)くるくる操り、そこにパートナーがいるように妖艶な演技を見せてくれた。あとでシェイリーン、御年50歳という情報を見て、口あんぐり。

 羽生くんと東北ユースオーケストラのコラボの1曲目は「Happy End」。この題名だけは、初日の公演を見た人たちのSNS発信で目にしていたが、どんな曲なのか、私は全く知らなかった。照明を落とした暗いスケートリンクに羽生くんらしき人影が現れ、氷上に仰向けに寝そべったところから演技が始まる。何かに追い立てられるような、焦りと怒りのメロディの繰り返し。もがきながら立ち上がり、倒れても前へ進み続ける。2024年の「カルミナ・ブラーナ」にも似て、より生々しい肉体と感情の表現だった。スカッと目の覚めるようなジャンプやスピンはないが、重たいものを投げ込まれた疲労感が、見る者にも一種の宗教的な(?)快感として残った。

 後半、コラボの2曲目は「八重の桜」。そうか、これも坂本龍一さんの曲なのか。私は大河ドラマ好きなので、もっとスケーターが大河ドラマの主題曲で滑ってくれたら、といつも思っていたので、嬉しかった。「Happy End」よりは明るく、苦しみの中にも希望が感じられる曲と演技。

 そしてフィナーレは「希望のうた」に加えて、東北ユースオーケストラがいつもアンコールに演奏しているという「Etude」。若さと希望にあふれていて、出演者たちも楽しそうだった。男子組と女子組に分かれてラインダンスをしたり、一緒になってわちゃわちゃしたり。最後は羽生くんから、慣れない環境で演奏した東北ユースの皆さんを称える言葉があり、いつもの「ありがとうございました!」で締め。

 今年はオフィシャルグッズの中に懐中電灯ペンライト(防災グッズにもなる)があり、公演会場では、これが中央制御で、さまざまな色に変化して楽しかった。スタンドが星空になったり、花畑になったりした。先行予約販売が早々に売り切れてしまったので、現地で公演開始前に買わねば、と早めに現地入りしたら、今年はグッズ売り場はそれほど混んでいなかった(2日目だったから?)。

 そして、グルメやお土産の出店を覗いてまわるのも、notte stellataの楽しみのうち。被災地つながりで輪島の朝市からいらしていた方のお店で、小魚の佃煮を購入した。東京の佃煮より薄味で美味しい。食べ切ってしまったら、輪島まで買いに行きたい。会場のセキスイハイムスーパーアリーナがある利府の名産は果物のナシで、利府梨を使った焼肉のたれがお薦めとのこと。今回は辛口を買ってみた。あと、現地では福島のタコ焼売も食べてきた。

 東京に日帰りもできなくはなかったが、1泊して、翌日、仙台市主催の「羽生結弦と仙台市展」(2026年3月4日~3月15日)を見に行った。時間指定チケットは取れなかったので、インフォメーションコーナーのみを参観したが、「悲愴」の衣装、東日本震災当時に履いていた練習用のスケート靴などを見ることができた。

 おまけ。セキスイハイムスーパーアリーナに掲示されていた、昨年の萬斎さんと羽生くんのサイン。

 大きな災害の後、鎮魂の思いから生まれた芸能が、人々を引き付け、エネルギッシュな祭りのにぎわいを作り上げていく。たぶんこの国の歴史の中で繰り返されてきた営みを見ているような気がした。