見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

能装束と呉州手のお正月/綾錦(根津美術館)

根津美術館 企画展『綾錦(あやにしき):近代西陣が認めた染織の美』(2025年12月20日〜2026年2月1日)

 同館コレクションから、能装束や古更紗など、近代の西陣で認められた染織の粋を展観する。根津美術館では数年に1回くらいのペースで染織をテーマにした企画展を開催しており、あまりこの分野が得意でない私も、だんだん楽しみ方が分かってきた。

 今回、会場には染織工芸品のほかに『綾錦』という冊子が展示されていた。これは、かつて西陣織物館(現・京都市考古資料館)が10年にわたって開催した展覧会の中から、特に優れた作品を選定して出版した染織図案集だという。図案が版画で再現されているのだが、え?紙?これ染織じゃないの??と頭が混乱してしまうくらい、版画の技術力がすごい。そして根津嘉一郎のコレクションには、この『綾錦』に掲載された能装束や古更紗を数多く見出すことができるのだそうだ。

 好みの装束を挙げていくと、まず『厚板 赤地段七宝繋に源氏車文様』。パッと華やかなオレンジ色で、19世紀(江戸~明治)の作だが、段替わり模様が「堂々とした桃山風」だと解説されていた。段替わり、大好きなのである。『唐織 萌黄地秋草冊子散模様』は、秋草と取り合わせて、存在感のある大きな冊子が散らされている。一種の吉祥文だと分かってはいるけれど、やっぱり本好きの女性が喜んだ模様かもしれないと想像してみる。『縫箔 茶地立涌雪持松模様』は、2022年の展覧会でも見て、印象深かったもの。能の子方(子どもの演者)の衣装なので、小さめに作られているが。けっこう重そうでもある。『唐織 茶地菊に蝶秋草模様』には、長春花(バラ)が描かれているというので探したら、五弁の花びらを中心に八重の花びらをまとった小さな花が、どうやらそれらしかった。

 『厚板 萌黄浅葱段小葵萩模様』は、段替わりであるけど、ほとんど段が目立たない。控えめに風景に溶け込む(であろう)植物の精のような装束で、老女の役柄に用いると書かれていた。私はこれが着てみたい。ほかにも「公達に用いる」とか「武士や鬼神に用いる」という装束と役柄の説明を、なるほど、と納得しながら眺めた。

 展示室5は「呉州手-吉祥の器-」。とにかく自由な呉州赤絵、オオカミみたいな麒麟、翼竜みたいな鳳凰など、どれも楽しくて嬉しかった。呉州赤絵もアクセントに青緑が用いられているが、青色を主としたものは呉州青絵(青呉州)と呼ぶ。呉州の青色は「西アジア起源のソーダ釉」(翡翠釉、トルコ青釉)であると解説にあり、確かに西アジアのやきものの青色と同じだ!と納得した。『呉州青絵赤壁図鉢』は、ここ根津美術館で何度か見ている大好きな作品。『呉州青絵楼閣文大皿』は、なんだか洋風?のヘンな建物が描かれていると思ったら、福建省で見られる土楼だった。中国文化は、この地域多様性が楽しい。

 展示室6は「初釜-新春を寿ぐ-」で、そこはかとなくおめでたいもの、干支の馬にちなむ道具が集められていた。ここにも呉州赤絵の福字文鉢が出ていた。