見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

台湾旅行2025年末【3日目】故宮博物院→帰国

 2泊3日の台湾旅行はあっという間に最終日。朝食後、ホテルをチェックアウトする。これは玄関ロビーのクリスマスツリー(鏡に私の姿が映っていたのはAIで補正した)。

 大した荷物はないので、そのまま故宮博物院(本館)に直行。最終日は3日間でいちばん天気がよかった。この日(12月29日)は月曜で、本来なら休館日だが、特別開館日に当たることを事前にチェックしていた。

 9:00の開館と同時に展示エリアに入館。滞在可能時間が3時間弱しかないので、今回は見たい展示室だけをピックアップする作戦である。

【105, 107】「甲子万年:国立故宮博物院開館100年記念特別展」(2025年10月10日~2026年1月4日)

105, 107室は特別展会場なので、いつも私はここから参観をスタートする。あまり人が流れてこない特別展もあるのだが、今季はさすがに違った。汝窯の『青磁無文水仙盆』があるし、西漢の玉璧があるし、初めて見る無款の『桃花図』は可憐で美しいし、その中に、ちょうど100年前に刊行された『故宮所蔵品点検報告書』のような興味深いアーカイブ資料も混じっていて、目を休めるヒマがない。これは、宋・蔡襄の書跡『致通理当世屯田尺牘』。優雅と洗練を感じさせて魅力的。

この色鮮やかな肖像画は『明太宗文皇帝半身像・明仁孝文皇后半身像』、つまり永楽帝と徐皇后(徐達の娘)である。

展示品はだいたい撮影できるのだが、「撮影禁止」の丸い札(おしゃもじみたいで可愛い)を持った監視員さんが立っている作品が、私の気づいた限りで2つあった。1つは蘇軾の『黄州寒食帖』。これは素晴らしかった。最前列で鑑賞するためにしばらく並んだが、みんな文句を言わずに待っていた。列が伸びて、結果的に直前の朱熹の『易繫辞』を、同じくらい時間をかけて眺めることになっているのは微笑ましかった。待ち時間が少し長くなると、監視員の方が大きなQRコードの紙を掲げて回ってきてくれた。スマホで読み取ると『寒食帖』の翻刻・解説サイトにアクセスできる。なお、調べたら『寒食帖』は2014年に東博に来ており、私はそのときも見ているのだが、完全に忘れていて、新鮮な感動を体験した。もう1点、撮影禁止だったのは、金・武元直筆『赤壁図』で、言葉にならないくらいよかった。これも実は2014年に見ており、東博の『台北 國立故宮博物院』展がどんなにすごかったかを、あらためて感じる機会になった。一方で、乾隆帝の『御筆詩経図』は、全く素人くさいんだけど、どこか惹かれるものがある。日本の徳川将軍の絵に通じるかもしれない。

 

【202, 204, 206, 208, 210, 212】「千年の出逢い-北宋西園雅集の物語」(2025年10月10日~2026年1月7日)

2階のほぼ半分を使った特別展。西園雅集とは、北宋時代、西園に文人墨客十六人が集い、清遊を楽しんだという故事を示す成語。西園雅集が史実かどうかは分からないが、北宋が中国史における「文雅の頂点」であったことを感じさせる展示だった。初めは、蘇軾の書!李公麟の画!と、いちいち興奮していたのだが、次から次と尽きせずお宝が出てくるので、そうか、こんなに残っているのか(そりゃあ本国だものな…)と納得した。

蘇軾の書跡で、とりわけ人が多く集まっていたのは『前赤壁賦』(赤壁賦の前篇)と『帰去来辞』だろう。これは後者。

李公麟の作品も、本当にたくさんあってびっくりした。私は針金のように細い線の白描画が好き。これは『免冑図』といって、郭子儀の逸話を描いたもの。

これは、日本の高級中華料理店の内装などでもよく見る『麗人行』の図。唐代の風俗を宋代に描いたものと見られ、後世、李公麟の筆に擬せられたという。まあ著名な画家にはありがち。

なお、最初の写真のように、展示室のあちこちに、東博所蔵の李公麟筆『五馬図』の画像があしらわれていたので、おや?と思ったら、10月10日~11月23日にこちらで展示されたそうだ。いや~国外の方々にも見ていただけてよかった!

そして、少数の注目作品を特集することの多い208室では、黄庭堅がミニ特集になっていた。『寒山子龐居士詩』いいわあ~。解説に「晩年精彩的大行書代表作」という。黄庭堅はいろいろな書風の作品を残しているが、私は特に「大行書」の類が好き。

さて、1階の特別展で1時間、2階で1時間を過ごしてしまったので、3階は廊下をひとまわりし(白菜・肉形石は出張中)、あとは1階の書籍の展示室を見ていくことにする。

 

【103, 104】「皕宋-故宮宋版図書コレクション(1)」(2025年10月10日~2026年1月4日)

同院所蔵の宋版書籍の中から特に上質なものを選出して展示。編年体の通史『資治通鑑』を効率的に読むために『通鑑紀事本末』や『資治通鑑綱目』が登場するというのは、昨年、岡本隆司氏の『二十四史』で読んだとおりで面白かった。蘇轍に『古史』という著作があるのは知らなかった。古典資料に基づいて司馬遷の『史記』を書き換え、自身の見解を示したものだという。岡本先生の本に出て来たかな?

『范文正公集』を見ることができたのも嬉しかった。范文正(范仲淹)は、中国ドラマ『孤城閉(清平楽)』に登場していたので、俳優の劉鈞さんの顔が浮かんでしまう。

 

 11:30を過ぎたので、今回はここまで。地階のミュージアムショップをさっと覗き、12:00に故宮本館前を出発する紅30系統のバスに乗った。士林→台北駅を経由して、桃園空港へ向かう。最終日に大きな荷物を持って故宮博物院に入り、ギリギリまで参観して空港に直行というのは悪くないかもしれない。

 しかし、もう少し故宮博物院で粘ってもよかったかな、と思ったが、桃園空港の出国審査後、搭乗ゲートが遠くて唖然としてしまった。私が帰国に桃園空港を使うのは2017年以来なので、拡張リニューアルなどがあったのだろうか。時間に余裕を持った行動が大事だなあと思った。夜10:00近くに成田空港着。その日のうちに帰宅できたが、成田は遠い。やっぱり次回は羽田-松山便を使いたい。

 

※故宮博物院の特別展は、なんと素晴らしいことに展示図録が電子書籍で公開されている(各サイト、トップページ下方の「電子書籍をオンラインで読む」をクリック)。それぞれ200ページ以上もあり、カラー図版も豊富な本格的な図録だ。

甲子万年

千年神遇:北宋西園雅集伝奇

日本の博物館にもこういうサービスを考えてほしいが、日本は、寺社や個人のコレクションを借用して特別展を開催することが多いから、難しいんだろうなあ、たぶん。