〇静嘉堂文庫美術館 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催記念『静嘉堂の国宝・重文・未来の国宝』(2025年10月4日~12月21日)
絵画がほぼ展示替えになったので、前期に続いて後期も見てきた。ギャラリー1には、前期の呼びものだった『馮昭儀当逸熊図』と『呂后斬戚夫人図』の作者・菊池容斎による『阿房宮図』が出ていた。これは見たことがあったかどうか、よく分からない。木村武山にも『阿房劫火』という作品があって、それと記憶が混乱している気がする。容斎の作品は、雪を頂くような高い山の中腹からふもとにかけてが業火と黒煙に包まれている。白い壁、長い回廊の続く巨大な宮殿は、中華風というより、どこか西洋風。人の姿がないので、自然災害のような不思議な光景になっている。
ギャラリー2は、水墨山水図の名品が並ぶ。倪元璐筆『秋景山水図』は山水画のお手本のような作品。前景に松が数本、画面右端に中景の山並み、そして左奥は水面が広がり、二艘の船が浮かぶ。王鐸筆『夏景山水図』は、画面上部の遠景と下部の近景が接続しておらず(間が雲に隠れている設定?)黒々した重量級の山塊が、宙に浮かんでいるように見える。その隣からは日本中世の水墨画になるのだが、画題は中国の故事なので、え?と作者名と時代表記(中国式か日本式か)を見直してしまった。全般的に日本の山水画のほうが線が細くて弱々しい。『竹林山水図』は、その繊細さが魅力だと思ったが、よく見たら中国水墨画(明時代)だった。
ギャラリー3、前期は容斎の作品が出ていた場所には、伝・周文(15世紀、室町時代)と式部輝忠(16世紀、同)の『四季山水図屏風』が並んでいた。六曲一双屏風が2件並んだところは圧巻。どちらも、左右の端に近景の山林を置き、中央は湖水か大河で、対岸の風景がぼんやり見えていいる。全体の構図も巧みだが、細かい描写もいろいろ面白い。
伝・周文作品。船の中に文人高士の姿が見えるが、背後には洗濯物が干してあると、わざわざパネルに注記してあり、見つけて笑ってしまった。

式部輝忠作品。船から荷物を持って陸に上がる、生活感あふれる人々。積み荷は書籍に見えたが違うかな。反物だろうか。

同じく式部輝忠。解説に、李迪筆『雪中帰牧図』の引用という指摘があった。なるほど。仔牛がついて来ているのがかわいい。なお、ギャラリー3のみ写真撮影可である。

ギャラリー4も、孫君沢筆『楼閣山水図』など名品目白押し。伝・馬遠筆『風雨山水図』は国宝なのか。全く異論はないけれど、日本の国宝指定を受けている中国絵画ってどのくらいあるんだろうと気になった。
実は絵画以上に目を奪われたのは、趙孟頫の『写中峰明本尺牘』。王義之を学んだという柔らかな書法がとても魅力的に感じられた。このひと、宋の太祖11代の孫だが、フビライに抜擢されて元に仕えたというのも興味深い。