見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2025年10-11月展覧会拾遺

 レポートを書けていない展覧会がたくさんあるのに、今週末はまた関西旅行なので、まとめて簡単なメモを書いておく。

東京藝術大学大学美術館 藝大コレクション展2025『名品リミックス!』(2025年10月7日~11月3日)

 先人の作品に向き合い、描き写すことで深まる"学び"のかたちに光をあてる。冒頭に福田美蘭の巨大な『秋-悲母観音』が展示されていた。赤子を大事に胸元に抱きかかえた悲母観音。やだー狩野芳崖『悲母観音』のパロディじゃないか、と思って、くすくす笑ってしまった。それが会場をぐるっと一周してきて、最後にこの作品の解説を読んで、2011年の東日本大震災をテーマに制作されたこと、観音の足元には津波に流された船や家屋が浮かぶ、当時の海が描かれていることに気づき、頭を殴られたように沈黙してしまった。

 高橋由一の『花魁』は久しぶりに見た。2023年度に保存修理が行われた結果、色彩が鮮やかさを取り戻し、ずいぶん印象が明るくなった気がした。平櫛田中の『鏡獅子』と『鏡獅子試作』(半裸の六代目尾上菊五郎)を並べて見ることができたのは貴重。個人的には明治年間の木炭スケッチ『診察』『弓手』が印象的だった。

永青文庫 令和7年度秋季展・重要文化財「黒き猫」修理完成記念『永青文庫 近代日本画の粋-あの猫が帰って来る!』(2025年10月4日~11月30日)

 初めての本格的な修理を施した『黒き猫』(菱田春草)が公開されるというので、前期(~11/3)のうちに見に行ったら、小さな美術館の玄関前に長い列ができていてびっくりした。入場制限をしているわけではないのだが、受付のレジが1台しかなくて捌き切れない状態だったようだ。私は「ぐるっとパス」のおかげで先に入れてもらえた。お目当ての黒猫は4階展示室の中央にいた。猫が座っているのは柿の木で、画面上方には、紅葉した(一部は黒ずんだ)柿の葉が茂る。着物の帯にしたくなるような装飾的なデザイン。そしてこの黒猫、警戒するようなイカ耳である。春草の『六歌仙』は、人物がひとりひとり大きく、生きた人間のように写実的に描かれていて面白かった。

府中市美術館 『フジタからはじまる猫の絵画史:藤田嗣治と洋画家たちの猫』(2025年9月20日~12月7日)

 藤田が描いた『裸婦の横の猫』を出発点に、日本の洋画家たちの猫の歴史を絵を26人の作家、83点の作品でたどる。府中市美術館は、2021年秋にも「動物の絵」をテーマにした展覧会を開催していて「西洋絵画の主役は人物で、そもそも動物の絵が少ない」ことを教えてくれた。そんな中、藤田は猫というモチーフを戦略的に描いて、洋画の魅力的なテーマへと押し上げていく。菱田春草の『黒猫』(背中を丸め、長い尾を垂らしたた子猫、播磨屋本店所蔵)にも会うことができた。長谷川潾二郎『猫と毛糸』(個人蔵)の精いっぱい伸びたハチワレ猫も好き。

山王美術館 『コレクションでつづる女性画家たち展』(2025年9月1日~2026年1月31日)

 先だって、大阪にフィギュアスケートNHK杯を見に行った際、最終日の午前中に少し時間があったので、さっと見られる展覧会を探して、ここに初訪問した。ホテルモントレ株式会社の創立者が収集したコレクションを公開・展示している美術館である。今季は女性画家の特集で、上村松園、三岸節子、片岡球子、マリー・ローランサンをたっぷり見ることができた。片岡球子の富士山シリーズがどれもよかった。

東京国立博物館・東洋館 博物館でアジアの旅・日韓国交正常化60周年『てくてくコリア-韓国文化のさんぽみち-』(2025年9月23日~11月16日)

 同館が所蔵する、韓国にちなんだ作品の数々を紹介する。見覚えのある作品もあり、初めて見るものもあって楽しかった。『神衆図軸』は初めてかな。しかし韓国の古いお寺をまわったとき、このように多数の神仏・供養人をまとめて描いた図をいくつかような記憶がある。

 『釜山草梁客舎日本使節接待図屏風』は、以前見たときも興奮したけれど、大きめの写真を上げておこう。

 どちらも朝鮮時代・19世紀なので、意外と新しい。

国立博物館・本館特別1室・特別2室 特集『平安武士の鬼退治-酒呑童子のものがたり-』(2025年9月30日~11月9日)

 今年5月のサントリー美術館『酒呑童子ビギンズ』の続編というわけではないのだろうが、なぜか酒呑童子が特集されていて興味深かった。最大の見どころは『酒呑童子図扇面』(個人蔵)だろう。酒呑童子は、サントリー品(狩野元信筆)を踏襲し、ちゃんと二人の童子に支えられて登場する。

 歌麿の『見立大江山』では、むくつけき武士たちが、可憐な少女たちに置き換えられていて笑ってしまった。