■大和文華館 特別展『みやこの舞楽-舞楽面と舞楽図でたどる芸能の美-』(2025年10月4日~11月9日)
初日は、徳川美術館と奈良博の間に大和文華館に寄った。舞楽は我が国で最も長い歴史をもつ芸能で「三方楽所」と称される大内(宮中)・南都(興福寺)・天王寺(四天王寺)が、その発展を主導してきた。本展は舞楽図と舞楽面によって舞楽の歴史を概観し、京都・奈良・大阪を中心に育まれた豊かな芸能文化の精華を紹介する。
私は、機会があれば生の公演を見に行くくらいの舞楽好きなので、この特別展はとても楽しみにしていた。しかし展示を見ると、まだまだ見たことのない演目が多いなあと感じた。よく知っている演目では、やっぱり『陵王』の面が独特で面白い。頭上の龍にはいくつかのパターンがあるのだな。姿勢を低く構えるもの、高く上体を起こすもの、両足で面の左右を挟むものなど。広島・厳島神社に伝わる面(平安時代)は「陵王面の白眉」と評されていたが、バリ島の魔女ランダを思い出した。春日大社に伝わる、寛文9年(1669)作の『陵王』は、金地に赤、青、緑の彩色が控えめに残っていて、美麗なことこの上なし。『還城楽』や『納曾利』も舞台上の姿が目に浮かぶ。
見たことがない演目は、たとえば『皇仁庭(おうにんてい)』。ほぼ生身の人の顔に近い造作で、入口近くにあった面は東大寺伝来(平安時代)だというが、肌がピンク色に塗られていて生々しかった。『採桑老』の面もたくさんあって、好まれた演目だったと思われるが、私は見たことがない。
舞楽絵は、大好きな『信西古楽図』(東京藝術大)をはじめ、山形・谷地八幡宮の神職の林家ゆかりの舞楽図譜など、めずらしい資料を見ることができた。この中では、マスクで顔を半分隠し、官人装束の長い袖を翻して舞う『新靺鞨(しんまか)』の図が気になった。しかしネットで拾える現代の公演記録には、絵図とぴったり一致するものがなかった。気になる。あと舞楽面で気になっていた『八仙』(崑崙八仙=ころばせ)は、舞楽図を見て、あ~君たちか!と思い出した。半円形のトサカをつけたトリの怪人みたいな風情。ぜひ実際の舞を見てみたい。
■相国寺承天閣美術館 企画展『屏風 黄金の調度』(2025年10月19日~2026年3月8日)
2日目は京博のあと、ここに寄った。相国寺を荘厳した伝来の屏風群を中心に、水墨、金地の華やかな屏風など、館蔵の屏風を公開する。冒頭のパネルに、相国寺では、1984年に承天閣の収蔵庫が造営されるまで、屏風は玄関に納められていました、とあって笑ってしまった。第1展示室で目についたのは、喜多川相説筆と伝わる『流水秋草図屏風』。秋草と言っても、ぎっしり山盛りに描かれたのは白菊で、その隙間に、わずかに赤や青の秋草が覗く。原在中筆『相国寺方丈杉戸絵』の鳳凰は、ハートを結びつけたような長い尾羽が可愛かった。
第2展示室では『伊勢物語・布引の滝図屏風』(室町時代)に惹かれた。小さく描かれた人物を遠くから見下ろすような、人の営みに対する冷淡さが好き。『花下遊楽図屏風』は、髭を蓄えた男性が多く、角刈りみたいなヘンな髪型が目立つ。近世初期の風俗なのだろうか。
後半は「自然を描く」で、雪村周継の『山水図屏風』が出ていて感激! しかし展示ケースの前が狭くて、六曲一双の全体を一目に収めることができないのが残念だった。応挙の『山水図屏風』『山中清遊図屏風』(右隻)には大満足。空間の3D的なとらえ方が素晴らしい。伝統的な「山水図」ではなく、近代的・革新的な「風景画」と呼びたくなる。そういえば東京・三井記念美術館の応挙展、本格的な風景画は出ていなかったな。また後期も行くけど。