〇徳川美術館・蓬左文庫 開館90周年記念 秋季特別展『尾張徳川家 名品のすべて』(2025年9月13日~11月9日)
久しぶりに名古屋で下車して徳川美術館に寄った。本展は、今年11月、徳川美術館と蓬左文庫が開館90年を迎えることを記念する特別展。昭和10(1935)年、徳川美術館は名古屋で開館し、蓬左文庫は東京目白の尾張徳川家邸内に開館ののち、1950年に名古屋市に移管された。ともに御三家筆頭であった尾張徳川家の収蔵品を守り伝える施設として、活動を続けている。
冒頭には、尾張家初代・徳川義直着用の『銀溜白糸威具足』。兜の前立てには真っ赤な日輪を配する。『長篠合戦図屛風』や刀剣、火縄銃などが出ていた。続いて、茶の湯道具と室礼。いくつか出ていた茶釜がどれも魅力的だった。特に『古芦屋八景釜』は山形にふくらんだ胴から肩が八分割されていて、カボチャみたいだった。天目茶碗と古銅の黒、青磁の青が目立つ清楚な空間。伝・無準師範筆・同賛の『達磨・郁山主・政黄牛図』三幅対(南宋時代)を見ることができて眼福! しかし真ん中の芦葉達磨は墨が薄くて老眼にはつらい。右の郁山主がまたがるロバ、左の 政黄牛こと惟正禅師がまたがる牛は、おちゃめで可愛い。
能面・能衣装を見て奥道具。伝・狩野山楽筆『四季花鳥図屛風』は華やかで見とれてしまった。山楽の大らかな描法とは異なる、と注釈が付いていたが。白描の『源氏物語絵詞』(鎌倉時代)は、源氏絵の現存作品として、国宝『源氏物語絵巻』に次ぐ古例とのこと。
続いて蓬左文庫の展示室に入る。『駿河御譲本』は貴重な朝鮮本をミニ特集。ほかに医書、絵図など。きらびやかな表紙の「調度としての書物」は婚礼道具として作られ、女性から女性へ受け継がれたというけれど、展示が殺伐とした『東鑑』と『源平盛衰記』なのに笑ってしまった。蓬左文庫の歴史も興味深く、いろいろな想像が広がった。
そして徳川美術館本館のメインホールである。特に予習なしに行ったので、まず『遊楽図屛風(相応寺屛風)』に驚く。近世初期に描かれた妓楼遊楽図の中でも最も初発的な作品と位置づけられるという。男衆の腰には長い刀が目立つ。
次に『豊国祭礼図屛風』左隻を見つけて、声にならない声が出そうだった。徳川美術館は、設立以後、積極的に名品の購入にも努めており、これは「購入品」なのだな。そして、この展覧会、ほとんどの作品の写真撮影が許可されているのだ。信じられん! どこを切り取っても魅力的な作品だが、まずは有名な「たけのこ男」。

寄せては返す大波のような色とかたちに幻惑されて、意識が遠のいていきそう。



高麗と朝鮮の仏画も素晴らしく、唐物漆器も楽しませてもらった。初代・徳川義直には明代の文人趣味があったという解説にはうなずけた。
それから徳川美術館の創設者である徳川義親氏に関する展示品もあった。いまWikipediaを読んでみたら、このひと婿養子なんだな。そして実に多彩な活動をしていることに驚いた。