■黎明アートルーム 特別展『柴田是真-対柳居から世界へ-』(2025年9月15日~10月31日)
柴田是真(1807-1891)の漆芸と絵画作品を、同館所蔵品と個人コレクションから初公開約30点を含む約100点を選んで展観する。特に「対柳居」(浅草橋にあった是真の住居兼仕事場)伝来とみられる新出の写生・粉本類によって、その制作の真の姿に迫るとともに、下積み時代の作品にも光を当てる。同館の展覧会には何度か足を運んでいるが、今回は「特別展」にふさわしく、質量ともに圧倒的だった。参観者は、ほぼ全作品の写真図版と解説を掲載したカラー図録(22頁)が無料でいただけるのもうれしい。
私は是真の名前を蒔絵師として覚えた。その後に絵画作品も見るようになったが、さほど感心したことはなかった。それが今回、粉本(画稿)の山を見て、すっかり魅了されてしまった。草花、鳥、小動物、野菜、そして人物も、写生のようで写生でない。自然のように見えるが、美的な構図にきっちり収められているのは、自然そのものではない。自然の美化(デザイン化)をさらに一歩、大胆に推し進めたところにあるのが漆芸作品ではないかと思う。『羽根蒔絵文箱』とか『烏蒔絵盃』とかカッコよくて惚れ惚れした。それにしても、中国絵画の板倉聖哲先生が監修に加わっていらっしゃるのがちょっと不思議。
■山種美術館 特別展『江戸の人気絵師 夢の競演 宗達から写楽、広重まで』(2025年8月9日~9月28日)
NHK大河ドラマで蔦屋重三郎が取り上げられ、浮世絵に注目が集まる今年、同館粒よりのコレクションを前・後期に分けて全点公開し、さらに岩佐又兵衛、俵屋宗達、池大雅、伊藤若冲など江戸絵画のビッグネームが手がけた優品の数々を展示する。
山種美術館、実は浮世絵コレクションもすごいというのは、うすうす気づいていたが、あらためて堪能した。特に広重作品が充実。展覧会の開催趣旨で「当館の浮世絵は保存状態が良い」と堂々と宣言していることにもうなずける。
浮世絵(版画)と、それ以外の江戸絵画が同時に見られる展覧会は、意外と少ないので面白かった。大好きな椿椿山『久能山真景図』を久しぶりに見ることができてうれしく、あとは青木夙夜『紅樹映雪図』や池大雅『指頭山水図』など、いわゆる文人画を好ましく感じて眺めた。
■荏原畠山美術館 夏季展『まだまだ見せます、新生荏原畠山美術館-中国観賞陶器、青銅器から新収集作品まで』(2025年7月26日~9月15日)
展覧会の第1章では、東洋のやきものと書画を夏ならではの涼やかな趣向で展示。第2章では、中国観賞陶器を中心に、多くの人々のくらしに彩りを添えてきた器の魅力を紹介する。第3章では、新収集作品と、関連展示として創設者・即翁畠山一清と後継者・酒井億尋の社会活動とその芸術レガシーを彫刻、絵画、建築でたどる。
バラエティに富んだ趣向で忙しかったが、印象に残る名品がいくつもあった。まず『芦葉達磨図』(南宋時代、画家不明)は、髭少なめで禿頭、塩顔の妙にさっぱりしたダルマだった。狩野養信『瀑布図』は涼しさを感じさせてよい。
やきものは『染付龍濤文天球瓶(青花)』(明時代)が見どころだろう。波涛を背景にした白抜きの龍。とにかく大きい。しかし私の好みは『呉須十二角共蓋水指』のほう。淡い黄色の地に青で山水をさらりと描く。ロバに乗った人物が気になる。『呉須山水茶碗』も同類の趣きで、線描きの山水が折れ線グラフみたいで可愛かった。
新館は、敢えて畳の上に中国磁器を置いた展示が面白かった。まあ日本での中国磁器の鑑賞方法としては普通で、特に狙ったわけではないのかもしれないが。『紫紅釉三足盤』は、短い三足のついた盤の周囲に擂座(るいざ)(丸いでっぱり)を等間隔に配する。類例はいくつかあるのだな。『古九谷色絵牡丹文皿』は、青手の古九谷とはちがって、柿右衛門みたいに愛らしい作品。畠山即翁は金沢の人だったな、と思い出す。国宝『禅機図断簡(智常・李渤図)』を見ることができたことも記録しておこう。