金沢出張の前に出かけた関西旅行のレポートをまだ書き終わっていなかった。2日目の土曜日は京都で2つ展覧会を見てから、大阪で文楽公演を見てきた。
■京都国立博物館 特別展『宋元仏画-蒼海(うみ)を越えたほとけたち』(2025年9月20日~11月16日)
国内に所蔵され宋元仏画(中国の宋と元の時代に制作された仏教絵画)を集め、制作された当地の文脈に照らしながら、それぞれの特色を紹介する。このテーマなら、そんなにお客さんは来ないだろう…と思いながら、朝イチの京博に出かけたら、やっぱり数十人が並んでいた。9:30開館だと思って30分前に到着したのだが、特別展は9:00開館で、すぐに列が動き出した。
冒頭の3階展示室は、『仏日庵公物目録』『君台観左右帳記』などの文書類や、天目茶碗・青磁瓶などに混じって絵画が展示されていたので、なるべく絵画にだけ注目しながら先へ進む。金地院所蔵の『秋景冬景山水図』は見たことがある。東博かな?と思って自分のブログを検索したら京博の特別展で2回見ていた。愛らしい『蜀葵遊猫図・萱草遊狗図』(大和文華館)とボリュームたっぷりの『牡丹図』(知恩院)は、どちらも彩色画。ここで、あれ?この展覧会「宋元仏画」じゃなかったっけ?と気づく。実は一般的には「仏画」の範疇に入らない宋元絵画(山水画、花鳥画)もけっこう出ているのである。
正統的な仏画では、仁和寺の『孔雀明王像』(北宋時代)と永保寺の『千手観音像』(南宋時代)が並んでいて圧巻だった。どちらも左右に顔を持つ「三面」であることに初めて気づいた。正法寺の『阿弥陀如来像』をはじめ、高麗仏画も出ていたが、高麗仏画は後期のほうが見ごたえがありそう。「道教・マニ教とのあわい」というセクションにもわくわくしたが、マニ教絵画は2件のみ(後期も2件)でちょっと期待外れ。でも中国語のキャプションには「磨尼教(明教)」とあって、武侠迷的にはにっこりしてしまった。
終章「日本美術と宋元仏画」も、さまざなな作品が見られて楽しい。最後の最後に蕭白の『群仙図屏風』が登場したときは、笑いながら、そう来たか!そうだよな!とうなずいてしまった。
■龍谷ミュージアム 秋季特別展『仏教と夢:ガンダーラから日本まで』(2025年9月20日~11月24日)
京博を見終わって、時間的に行けそうだったので、こちらにも寄った。誰もがみたことのある「夢」は、仏教の世界観のなかで如何に扱われてきたかを紐解く展覧会。釈迦の誕生にまつわる「托胎霊夢」はもちろん知っている。砂漠に倒れ伏した玄奘三蔵が深沙大将に出会うのも夢なのか。舞鶴の金剛院から快慶作の深沙大将像が来ていて、恐ろしくもカッコよかった。
明恵上人の『夢記』とか『石山寺縁起絵巻』に描かれた道綱母とか、日本独自の「夢」の話もそれなりにあるのだが、思った以上に中国ネタが多く、中国絵画もたくさん出ていて驚いた。たとえば、神奈川・称名寺の伝・貫休筆『十六羅漢像』(元時代)は、京博に出ていないな~と思ったら、こっちに出ていた。『唐僧取経図冊』上冊(元時代、個人蔵?)はおよそ十数年ぶりの展示で、下冊は京博で展示されているとの注意書が付けられていた。華やかな色彩、いずれも物語を感じさせる場面が描かれていて、絵巻みたいで楽しい。
たぶん初めて見たと思う詳細不明の『羅漢図』(南宋~元時代、個人蔵?)も気になったし、清・嘉慶14年の大幅『天台山図』(延暦寺)も面白かった。この秋、宋元仏画目当てで京博に行く人は、こっちの展示も絶対寄るべきである。