〇東北歴史博物館 夏季特別展『世界遺産縄文』(2025年7月12日~9月15日)
金曜に仕事で仙台に出張したので、自費で1泊付け加えて、この展覧会を見てきた。チラシの謳い文句は「遮光器土偶が見ていた世界」。2021年に世界文化遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」の出土品や、東北の縄文文化圏の象徴である「遮光器土偶」、さらに「国宝土偶」などを通して、世界に認められた縄文文化と1万年以上も続いた持続可能な社会とはどのようなものであったのか、「北の縄文人」のすがた、暮らしを紹介する。
私は、近年、縄文時代に関心を向けているが、その一方、「縄文」を語る本や展覧会には警戒してしまう。ときどき、縄文時代をパラダイスみたいに捉えた誇大妄想に出会うからである。しかし、幸い、本展にはそうした要素は感じられなかった。
はじめにガイダンスルームで「北海道・北東北の縄文遺跡群」の多様な風景の映像を見ることができる。深い森の奥、明るい草原、海の幸にめぐまれた海岸、一面雪に覆われた厳しい冬景色…。「北海道・北東北」と総称されてはいても、それぞれ異なる環境条件下に展開した文化の一群であることが分かる。
それは発掘された遺物についても同様で、土器に特徴があるもの、祭祀跡に特徴があるもの、動物の骨が出土するもの、貝塚があるものなど、さまざまである。縄文時代に漆塗り土器があったことは、以前どこかの展覧会で見て知っていたが、今回それが亀ヶ岡遺跡(青森県つがる市)という名前としっかり結びついた。
そして、この亀ヶ岡遺跡からは片足を欠損した遮光器土偶も出土している。北方の民族が雪中で使用する遮光器(スノーゴーグル)をつけたような土偶は、主に東北地方で発見されている。

こちらは藤株遺跡(秋田県北秋田市)出土、東北大学大学院文学研究科所蔵と書いてあった。

遮光器土偶は完全形で出土することは極めて稀らしいが、1体だけ欠損のないものがあり、お!と思って近づいたら、東博の所蔵だった。東京でまた会いに行くことにしよう。
動物をかたどった土製品は、サルやイノシシ、シャチもあったが、やっぱりクマが気になった。青森県弘前市のクマ形土製品は、首筋にツキノワグマを思わせる模様が描かれているとのこと。国宝の「合掌土偶」(是川縄文館、青森県八戸市)や「縄文の女神」(山形県立博物館)の複製も見ることができた。なお、「合掌土偶」を出土した風張遺跡、「縄文の女神」を出土した山形県舟形町西ノ前遺跡は「北海道・北東北の縄文遺跡群」に含まれてはいない。縄文といえば、関東の人間にはなじみ深い「火焔型土器」は、それっぽいものが1点出ていただけだった。全体としては、日常を地道に生きる東北の人々の祖先を感じさせて、とてもよかった。
このあと、博物館前から路線バスで仙石線の多賀城駅に向かい、松島海岸に出て、久しぶりに瑞巌寺と五大堂を拝観したが、猛暑の外歩きが耐え難く、早めに観光を切り上げて東京に戻った。