見もの・読みもの日記

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ペルシャ陶器と絵画の楽しみ/美しい人びと(松岡美術館)

松岡美術館 『美しい人びと 松園からローランサンまで』『憧憬のペルシア』他(2023年2月21日〜6月4日)

 ふらっと寄っただけの展覧会だが、なかなかよかったので書いておく。展示室4の『憧憬のペルシア』では、ペルシア陶器56件を展示する。ペルシア陶器とは、イスラーム時代に中近東で作られた陶器をいう。中近東史に詳しくないので「イスラーム時代」を調べたら、Wipipediaには、イスラーム黄金時代=アッバース王朝(750-1258)のこと、という説明が載っていた。おお、まさに読み終わったばかりの東ユーラシアの唐(618-907)と重なる時代である。松岡美術館の初代館長・松岡清次郎は、1972年、初めて海外オークションに参加し、帰途に立ち寄ったテヘラン(イラン)で9世紀から13世紀のペルシア陶器をまとめて取得したという。

 これまで東博出光美術館で、ペルシア陶器(イスラーム陶器)を見たことがないわけではないが、こんなに大量の名品が並んだ状態を見るのは初めてで、いい意味で「開いた口がふさがらない」状態になってしまった。唐三彩と同じ『三彩刻線花文鉢』を見ると、この色合いが大唐の人々にとってもエキゾチックだったことが分かる。黄地や白地に描かれた人物文や動物文は、目が大きくて(三白眼で)表情がはっきりしていて、絵本かマンガの主人公のように可愛い。ラスター彩の美しさは言葉にならない!しかも口径40センチを超える大鉢や、頸の細い水瓶や、把手つきの壺もあるのだ。

 「青釉」と表現されるターコイズブルー釉薬は12世紀以降に作られたものだという。この目に沁みる青空のような陶器を床の間に飾るとしたら、取り合わせは何だろう? 青一色を引き立てるには、白いウツギ(卯の花)を活けて、墨蹟を掛けるのはどうかな、などと妄想をふくらませた。珍しくて、楽しい展覧会だった。

 続いて展示室5、6は『美しい人びと』。和洋を取り混ぜ、古今の「美しい」人物画を展示する。モデルの性別にはこだわらないが、やはり女性像が多い。応挙など江戸の美人画に始まり、松園、清方、深水など名手が並ぶ。私は伊藤小坡(いとう しょうは)の『ほととぎす』『麗春』(醍醐の花見をイメージ)に惹かれた。目が小さくて、目と目の間が離れている感じの女性の顔がいい。このひと、女性画家なのだな。真野満『藤三娘』(光明子)や松岡加世子『燭光』(細川ガラシャ)のような歴史画も好き。

 梶原緋佐子も好きな画家なので『白川路』を見ることができて嬉しかった。厚みのある肉体を作業着に包んだ大原女の立ち姿。濱田台兒の『九曲』に描かれたチャイナドレスの女性二人も、堂々と正面に視線を向けていた(と記憶する)。「九曲」は中国庭園につきものの九曲橋だという。日本なら八つ橋なのに面白いな。松岡美術館、女性画家の作品を多く収蔵しているとともに、描かれている女性像も新鮮である。

 下村観山『山寺の春』は、桜咲く鞍馬寺義経(牛若丸)を描いたもの。明るくのどかな風景だけど、見る者は少年の運命を知っているのが悲しい。小堀鞆音の『孝子小松内府図』という作品もあり、『平家物語』の世界には、多数の「美しい人びと」が存在していることを思った。