世田谷区岡本にある静嘉堂文庫美術館が、丸の内の明治生命館1階に移転することになった。そんな噂は全く聞いていなかったので、いきなり「世田谷岡本での最後の展覧会」という告知が出て、びっくりした。2014~15年に展示室をリニューアルしたばかりではないか!
ともかく最後の展覧会には行っておこうと思っていたら、緊急事態宣言で休館になってしまった。ハラハラしたが、6月1日から再開し、会期も6月6日までの予定が6月13日まで延長になった。私は、再開情報はチェックしていたが、会期延長には気づかず、最後の週末だと思った土曜日、東京ステーションギャラリーの次はここへ向かった。
いつものように二子玉川駅からバスに乗り、美術館に到着したのは14時頃だったと思う。建物の周囲は、いつになく人の姿が多く、入口の前でお姉さんが券を配っている。時間指定の入場整理券で、私がもらったのは16:30の券だった。閉館は17時だが状況によっては考慮します、とおっしゃるお姉さん。「今日はやめた。明日の朝早く来よう」と言って帰っていくのはご近所の方だろうか。「ここは遠いんだから、ちゃんと情報発信してよ!」と怒っているお客さんもいた。
私は観念して2時間半待つことに決めた。静嘉堂文庫には何十年も通っているが、バス停と美術館を往復しかしたことがないので、ちょっと周辺を歩いてみることにした。民家園なら裏門が近いですよ、と職員の方に教えてもらい、初めて裏門の存在を知る。石段を下ると民家園に出る。

旧長崎家主屋と土蔵1棟、椀木門を復原し、江戸後期の典型的な農家の家屋を再現した施設。主屋には管理の方が常駐し、囲炉裏で火を焚いている。前庭には小さな畑もある。のんびり過ごすにはいいところだが、実は、もっと多数の民家を集めた公園だと思っていたので、ちょっと拍子抜けした。

表通りを戻る途中、バス停の向かいに「小坂緑地」という門があることに初めて気づいたので入ってみた。竹林の中、順路に添って坂を上がっていくと「旧小坂家住宅」という建物が現われた。実業家で衆議院議員、戦前の枢密顧問官でもあった小坂順造氏(1881-1960)の別邸である。この一帯は、明治から昭和にかけて財界人の週末別荘が立ち並んでいたが、この建物(1938年竣工)が、現存する近代別荘建築の唯一のものだという。

中に入れたので、縁側でひとやすみさせてもらった。茶室があるかと思えば、山小屋風の意匠の洋室があったりして面白かった。薪をくべる暖炉は飾りで、実はセントラルヒーティングがあると、管理している方が教えてくれた。
これでだいたい1時間半ほど時間をつぶし、静嘉堂文庫の前庭に戻って、残りの時間はベンチで本を読みながら待つ。16:00の入館が済んだあと、10分ほどすると「16:30の方、お並びください」と呼ばれた。入館の際に、さらに番号札を貰う。チケットを購入すると、地下の講堂に案内され、静嘉堂文庫の紹介ビデオなどを見ながら待つ。やがて番号順に(10人くらいずつ)呼ばれて展示室に入ることができる。幸い、覚悟していたよりはだいぶ早く、展示室に入ることができた。長くなったので、※展示内容については別記事に続く。