見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2017-01-01から1年間の記事一覧

美の冒険/江戸の琳派芸術(出光美術館)

〇出光美術館 『江戸の琳派芸術』(2017年9月16日~11月5日) 江戸琳派、すなわち江戸時代後期に活躍した絵師・酒井抱一(1761-1828)と、抱一門きっての俊才・鈴木其一(1796-1858)の絵画に注目した展覧会。だいぶ前に行ったので、思い出しながら書く。出…

探検家vs.中世日本史家/世界の辺境とハードボイルド室町時代(高野秀行、清水克行)

〇高野秀行、清水克行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』 集英社インターナショナル 2015.8 書店で平積みになっていたのを購入し、読んでみたら、むちゃくちゃ面白い。こんなに面白い本が、なぜ話題にならないんだろうと思って、奥付を見たら、2年前に…

永青文庫で購入/等伯の説話画 南禅寺天授庵の襖絵(須賀みほ)

〇須賀みほ『等伯の説話画 南禅寺天授庵の襖絵』 青幻舎 2015.4 昨日のブログに書いたように、永青文庫の秋季展『重要文化財 長谷川等伯障壁画展 南禅寺天授庵と細川幽斎』を見に行って、帰りに受付で本書を見つけ、しばらく迷った末に購入してしまった。32…

等伯が描く禅宗祖師たち/南禅寺天授庵と細川幽斎(永青文庫)

〇永青文庫 秋季展『重要文化財 長谷川等伯障壁画展 南禅寺天授庵と細川幽斎』(2017年9月30日~11月26日) 南禅寺塔頭・天授庵といえば長谷川等伯である。というほど、きちんと両者が結びついているわけではないのだが、直近では、昨年、京博の『禅』展で見…

禅宗の世界を多角的に/大般若経と禅宗(五島美術館)

〇五島美術館 秋の優品展『大般若経と禅宗』(2017年8月26日~10月15日) ポスターのビジュアルが経文なので、なんとなく古写経とか墨蹟とか、文字ばかりが並ぶ展覧会を想像して行ったら、意外と絵画資料が多くて、華やかな展覧会だった。入ってすぐ目につく…

2017年8-9月@東京近郊展覧会拾遺

■太田記念美術館 特別展『月岡芳年 月百姿』(2017年9月1日~9月24日) 『妖怪百物語』に続く月岡芳年展の第2部。『月百姿(ひゃくし)』は明治18-25年(1885-92)に刊行された、芳年(1839-1892)最晩年の傑作である。100点全てを一挙に見られる機会はあま…

感情と合理性/競争社会の歩き方(大竹文雄)

〇大竹文雄『競争社会の歩き方:自分の「強み」を見つけるには』(中公新書) 中央公論新社 2017.8 著者の名前を見て、あ、「競争社会」の人だ、と思った。前著『競争と公平感』(中公新書、2010)がとても面白かったのである。かなり評判にもなったはずだ。…

門前仲町グルメ散歩:あんみつ食べ比べ

今夜も帰りが遅くなって、長い記事を書いている暇がないので、とりあえず、ご近所グルメ日記。 名店「甘味処いり江」の白玉クリームあんみつ。上品な味わい。むかし、グルメの友人と食べにきたときは「白みつが本格派!」と勧められたのだが、私は黒みつが好…

美麗仏画を楽しむ/ほとけを支える(根津美術館)

〇根津美術館 企画展『ほとけを支える-蓮華・霊獣・天部・邪鬼-』(2017年9月14日~10月22日) 仏教の多種多様なほとけを、蓮華、霊獣、邪鬼など「支えるもの」という視点から見てみようという趣向の展覧会。なんとなく彫刻の仏像をイメージしていたが、絵…

南蘋派もいろいろ/江戸の花鳥画(板橋区立美術館)

〇板橋区立美術館 館蔵品展『江戸の花鳥画-狩野派から民間画壇まで-』(2017年9月2日~10月9日) このところ、行きっぱなしでレポートを書いていない展覧会がかなりある。なかなか時間が取れないためだが、頑張って書く。この展覧会は先週、東日本を台風が…

ニッポンの郷土銘菓/地元パン手帖(甲斐みのり)

〇甲斐みのり『地元パン手帖』 グラフィック社 2016.2 食べ物や食べ物屋さんの写真を集めた本は、ときどき、手元に置いて眺めたくなる。これまでも、蕎麦とか餃子とかスイーツとかの本を取り上げてきた。本書は、食パン、メロンパン、菓子パン、総菜パンなど…

中国の白話小説から日本の怪談へ/お化けの愛し方(荒俣宏)

〇荒俣宏『お化けの愛し方:なぜ人は怪談が好きなのか』(ポプラ新書) ポプラ社 2017.7 表紙のあとに「妖怪お化け映画大会」のポスター図版が掲載されているので、近現代のお化けの話かな、と思っていたら、だいぶ違った。「まえがき」は、著者自身の回想か…

インドネシアとともに/海洋国家日本の戦後史(宮城大蔵)

○宮城大蔵『増補 海洋国家日本の戦後史:アジア変貌の軌跡を読み解く』(ちくま学芸文庫) 筑摩書房 2017.8増補 実は、読む前に思い描いていたのとは、ずいぶん異なる内容だった。内容の過半は、インドネシアの戦後政治史、あるいは戦後日本とインドネシアの…

社会派の群像劇/中華ドラマ『人民的名義』、看完了

〇『人民的名義』全55集(DVD版)(2017年、最高人民検察院影視中心等) 今年3月から4月に湖南衛視等で放映され、中国国内で大反響を引き起こしたドラマである。私は、中国ドラマは古装劇ひとすじなので、現代劇は他人事だと思っていた。それが、SNSなどでの…

金色の妖狐再び/文楽・生写朝顔話、玉藻前曦袂

○国立劇場 人形浄瑠璃文楽 平成29年9月公演 ・第1部『生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)・宇治川蛍狩りの段/明石浦船別れの段/浜松小屋の段/嶋田宿笑い薬の段/宿屋の段/大井川の段』(9月10日、11:00~) 『生写朝顔話』は初めて見る演目。今期…

常設展エリアで遊ぶ/徳川将軍家へようこそ(江戸東京博物館)

○江戸東京博物館 常設展+企画展『徳川将軍家へようこそ』(2017年8月11日〜9月24日) 特別展だと思い込んで江戸博に行ったら、常設展エリアの企画展だった。それじゃあ、ごく小規模な展示なんだなとガッカリしたが、久しぶりに常設展を見るのもいいかなと思…

美しい暮らしのお手伝い/民藝の日本(日本橋高島屋)

〇タカシマヤ 日本橋店8階ホール 日本民藝館創設80周年記念『民藝の日本-柳宗悦と「手仕事の日本」を旅する』(2017年8月30日~9月11日) 日本民藝館には何度も行っているので、新鮮味はないかな?と思いながら、寄り道してみた。展示品は見覚えのあるもの…

法勝寺落慶供養の復元/声明と舞楽・荘厳の調べ

〇国立劇場 第54回声明公演『声明と舞楽 荘厳の調べ:法勝寺供養次第による舞楽法会』(2017年9月9日、14:00~) プログラム(冊子)の解説によれば、声明に舞楽を取り入れた伝統的な法要は平安期に隆盛を極めた後、次第に衰退してしまった。国立劇場では、…

雑な歴史談義/習近平と永楽帝(山本秀也)

〇山本秀也『習近平と永楽帝:中華帝国皇帝の野望』(新潮選書) 新潮社 2017.8 タイトルに惹かれて、期待して読み始めたのだが、あまり得るところはなかった。明の永楽帝と習近平には意外なほど共通点がある、というのが本書の見立てである。具体的には、(1…

再訪:源信(奈良国立博物館)+西大寺展(あべのハルカス)

■奈良国立博物館 1000年忌特別展『源信:地獄・極楽への扉』(2017年7月15日~9月3日) 前期に続いて後期も、駆け込みで見てきた。彫刻はだいたい前期のままだったが、絵画資料はがらりと入れ替わった。古い仏書や文書類も、チェックしてみると、けっこう入…

江戸と大坂の干鰯市場を例に/近世商人と市場(原直史)

〇原直史『近世商人と市場』(日本史リブレット) 山川出版社 2017.7 近世は商品経済が次第に社会を覆っておく時代であり、市場(いちば)が発展し、現代の専門化・高度化した市場(いちば/しじょう)の基礎が形づくられた時代だった。本書では魚肥(ぎょひ…

2017京の夏の旅・花山天文台を訪ねる

恒例「京の夏の旅」(2017年7月8日~9月30日)による文化財特別公開。最近、新鮮味に欠けるなあと思っていたら、今年は予想もしていなかった新鮮な文化財の公開が加わった。昭和4年(1929)設立の京都大学仮花山天文台(かざんてんもんだい)である。日本の…

忘れてはならないこと/九月、東京の路上で(加藤直樹)

〇加藤直樹『九月、東京の路上で:1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』 ころから 2014.3 数年前から時々話題になる本なので存在は知っていたが、進んで読もうとは思わなかった。読んだらきっと鬱になるだろうと思って、むしろ遠ざけていた。それが、やっ…

戦争と探偵小説家/乱歩と正史(内田隆三)

〇内田隆三『乱歩と正史:人はなぜ死の夢を見るのか』(講談社選書メチエ) 講談社 2017.7 江戸川乱歩(1894-1965)と横溝正史(1902-1981)という二人の作家を軸にして、日本における本格探偵小説の創造の過程を明らかにする。この創造の過程は、第一次世界…

総力戦の夢を乗せて/飛行機の戦争(一ノ瀬俊也)

〇一ノ瀬俊也『飛行機の戦争1914-1945:総力戦体制への道』(講談社現代新書) 講談社 2017.7 日本が太平洋戦争に敗北した理由の一つとして「大艦巨砲主義」という言葉がある。日本軍は、伝統的な艦隊決戦に拘りつづけ、「航空戦力を基軸にした海軍戦力の再…

神戸市立博物館リニューアル基本計画(2016年3月)を読む

先日、神戸開港150年記念特別展『開国への潮流』を見るために、神戸市立博物館に行った。どこかカフェで一休みしようと思いながら直行してしまったので、博物館の2階にある喫茶室「エトワール」に初めて入ってみた。ガラス細工の飾りケースがあったり、背の…

山城から巨大城郭へ/天下人の城(徳川美術館)

〇徳川美術館+蓬左文庫 特別展『天下人の城-信長・秀吉・家康-』(2017年7月15日~9月10日) 前日は大阪(伊丹)泊。朝イチに名古屋に移動する。久しぶりに名古屋駅に降りたら、バスターミナルが開業(2017年4月1日)し、徳川美術館行きのバス乗り場が変…

文書と絵画資料で読み解く/開国への潮流(神戸市立博物館)

〇神戸市立博物館 特別展 神戸開港150年記念特別展『開国への潮流-開港前夜の兵庫と神戸-』(2017年8月5日~9月24日) 岡山の林原美術館を見終わったあと、次の目的地に行けそう、と思って新幹線に乗る。岡山観光も考えていたのが、次の機会を待つことにす…

絵画に物語を読む/「清明上河図」と中国絵画の至宝(林原美術館)

〇林原美術館 企画展『一挙公開!「清明上河図」と中国絵画の至宝』(2017年7月15日~9月3日) この週末は、見逃したくない展覧会を見るために1泊弾丸旅行をしてきた。ひとつめの目的地がここである。土曜の朝、空路で岡山入りして、お昼過ぎに岡山駅前に到…

芳年をめぐる/妖怪百物語(太田記念美術館)+歴史×妖×芳年(横浜市歴史博物館)

■太田記念美術館 特別展『月岡芳年 妖怪百物語』(2017年7月29日~8月27日) 月岡芳年(1839-1892)の妖怪画の世界を紹介する展覧会。初期の揃物「和漢百物語」26図と、最晩年の揃物「新形三十六怪撰」36図を全点公開という触れ込みに惹かれて行ってきた。お盆…