見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2010-01-01から1年間の記事一覧

いくつかの疑問/孫正義のデジタル教育が日本を救う(中村東吾)

○中村東吾『孫正義のデジタル教育が日本を救う』(角川SSC新書) 角川書店 2010.11 このところ電子書籍のことを考えていたので、先々週末くらいに書店で本書を見て、「デジタル教育/電子教科書」というキーワードに引かれて読んだ。毀誉褒貶の多い孫正義と…

書斎の秘仏/近江の祈りと美(寿福滋、高梨純次)

○寿福滋・写真、高梨純次・文『近江の祈りと美』 サンライズ出版 2010.10 というわけで、33年に1度の「秘仏本尊ご開帳」を拝観に行った正明寺で、本書を衝動買いしてしまった顛末は報告のとおり。本書は、近江の仏像、神像200余点のカラー写真集成である(石…

秘仏のたのしみ/正明寺(滋賀県蒲生郡日野町)

○正明寺(滋賀県蒲生郡日野町):本尊・千手観音菩薩立像御開帳(2010年10月17日~11月23日) 秘仏ご本尊は「33年に1度のご開帳」だという。10月に行ってきた友人からは「とにかく不便」と聞いていたが、覚悟を決めて行くことにした。近江八幡駅の南口から1…

秘仏のたのしみ/秋篠寺(奈良):大元帥明王立像

○秋篠寺(奈良市秋篠町):大元帥明王立像ご開帳(2010年11月8日~11月21日) 金曜日に奈良で仕事があったので、後泊して見仏してきた。お目当ては、遷都1300年祭(11/7で終了)を記念して、まだまだ続く秘仏・秘宝公開のひとつ、秋篠寺の大元帥明王立像(重…

意外と人間臭い/国宝 源氏物語絵巻(五島美術館)

○五島美術館 開館50周年記念特別展『国宝 源氏物語巻』(2010年11月3日~11月28日) 改修休館前の最後の特別展だが、五島美術館所蔵の『源氏物語絵巻』は何度も見たことがあって、あまり気乗りがしなかった。徳川美術館所蔵分も展示されると分かって、それじ…

ハイビジョン工芸/幕末・明治の超絶技巧(泉屋博古館分館)

○泉屋博古館分館 特別展『幕末・明治の超絶技巧 世界を驚嘆させた金属工芸-清水三年坂美術館コレクションを中心に-』(2010年10月16日~12月12日) 幕末から明治時代にかけて世界を席巻した日本の金属工芸の展覧会。ネットの評判が妙にいいので見に行った…

東大で貴重書を見る/史料展覧会(史料編纂所)ほか

○東京大学史料編纂所 第35回 史料展覧会(2010年11月12~13日) 『大日本史料』等の編纂刊行で知られる同研究所が、秋の週末に行う史料展覧会。前回、参観したのは…と自分のブログを検索したら2005年、これが第34回である。ということは、4年間、私が行き逃…

中国的「国民の誕生」/革命とナショナリズム(石川禎浩)

○石川禎浩『革命とナショナリズム:1925-1945』(岩波新書:シリーズ中国近現代史3) 岩波書店 2010.10 これまで読んできた中国近代史とは、ちょっと毛色のちがう本だった。多くの日本人は、「日中関係」を基軸として中国の近現代史を眺めている。しかし、当…

顕教の美と六道絵/大津 国宝への旅(大津市歴史博物館)

○大津市歴史博物館 開館20周年記念企画展『大津 国宝への旅』(2010年10月9日~11月23日/後期:11月2日~) めずらしく仕事で京都に行ったので、半日の会議を終えて、あたふたと大津に向かった。10月に前期を観覧したこの展覧会の、後期を見るためである。…

みんなで考える/希望のつくり方(玄田有史)

○玄田有史『希望のつくり方』(岩波新書) 岩波書店 2010.10 2005年、著者の勤務する東京大学社会科学研究所が「希望学」というプロジェクトを始めると聞いたときは、正直、ええ~と思って引いてしまった。新興宗教じゃあるまいし。以来、このプロジェクトの…

守り伝えた人々/東大寺大仏(東京国立博物館)

○東京国立博物館 光明皇后1250年御遠忌記念特別展『東大寺大仏-天平の至宝-』(2010年10月8日~2010年12月12日) 大仏造立に関わる作品を通して天平文化の精華を紹介する展覧会。早くに行った友人からは「拍子抜けするほど空いている」と聞いていたが、せ…

東京のほとけ/救いのほとけ(町田市立国際版画美術館)

○町田市立国際版画美術館 企画展『救いのほとけ-観音と地蔵の美術-』(2010年10月9日~11月23日) 町田の国際版画美術館には、むかし1、2度来たことがあるはずだが、2004年から書いているこのブログに記事がないのだから、本当に久しぶりだ。本展は、観音…

民権運動という触媒/客分と国民のあいだ(牧原憲夫)

○牧原憲夫『客分と国民のあいだ:近代民衆の政治意識』(ニューヒストリー近代日本 1) 吉川弘文館 1998.7 誰が政権を握ろうとも、安穏に生活できればそれでいい。近世以来、「客分」意識の濃厚だった日本の民衆が、近代国家に適合した「国民」に変容できた…

遷都1300年祭大詰め(4):正倉院展2010

■奈良国立博物館 特別展『第62回正倉院展』(2010年10月23日~11月11日) 正倉院展も通い続けて9年目になった。むかしは日中とか夕方に来たこともあったが、このところ、混雑を避けて「朝一番に並ぶ」ことを通例にしてきた。ところが、最近は、開館と同時に…

遷都1300年祭大詰め(3):生駒宝山寺の獅子閣

明治初期、宝山寺第14世の乗空和尚が、宮大工・吉村松太郎に建てさせた客殿。和尚は、聖天堂再建の際に大工として働いていた吉村松太郎の腕を見込み、横浜に留学させたのち、洋風客殿建築の棟梁に抜擢した。この経緯は、明治8年建立の聖天堂の棟札には松太郎…

遷都1300年祭大詰め(2):奈良大和路 秘仏・秘宝特別開帳

■宝山寺(奈良県生駒市):獅子閣特別開帳(2010年10月15日~11月15日) 台風一過の日曜日。前日は雨を恐れてあきらめた郊外の「特別開帳」寺社めぐりへ。宮大工の吉村松太郎が設計した、明治初期の擬洋風建築、獅子閣が特別公開されている。内部公開(靴を…

遷都1300年祭大詰め:薬師寺、平城宮跡資料館、奈良県美

週末は台風とすれ違うように、遷都1300年祭のフィナーレが近づく奈良へ。もちろん目的は正倉院展だが、その前に。 ■薬師寺(奈良市西ノ京町) まもなく解体修理が始まる東塔初層の特別開扉(2010年4月8日~10月31日)をようやく見に行った。中に入れるのかと…

のどかなオリエンタリズム/マイセン 西洋磁器の誕生(大倉集古館)

○大倉集古館 『開窯300年 マイセン 西洋磁器の誕生』展(2010年10月2日~12月19日) ヨーロッパで最初の磁器を誕生させた「マイセン工房」は、1710年、アウグスト強王によって創設され、後続のヨーロッパ各地の磁器窯の器形、文様、装飾技法を60年間リードし…

雨過天青雲破処/南宋の青磁(根津美術館)

○根津美術館 『南宋の青磁-宙(そら)をうつすうつわ』(2010年10月9日~11月14日) 青磁の展覧会といえば、2006年の出光美術館の『青磁の美』や2007年の静嘉堂文庫の『中国・青磁のきらめき』展を思い出す。まだ「やきもの」初心者だった私には、え?これ…

奇を好む人々/東文研公開講座「アジアの奇」

○東京大学東洋文化研究所 第10回公開講座『アジアを知れば世界が見える-アジアの奇』 ■菅豊「中国の『奇』の文化誌」 はじめに、中国・日本をフィールドに民俗学を専門としている菅先生から「奇とは何か」という総論的な講演。「奇」とは「普通とは異なる不…

書物の下に自らを置く/書誌学のすすめ(高橋智)

○高橋智『書誌学のすすめ:中国の愛書文化に学ぶ』(東方選書) 東方書店 2010.9 たとえば静嘉堂文庫や五島美術館が「古籍」を特集する展覧会を開催すると、私は欠かさず見に行く。日本の古書、華やかな料紙に散らされた古筆も美しいが、中国の古籍、四角い…

本屋カフェ/UCCカフェコンフォート(三省堂本店)

忙しい日々。ちゃんと仕事があって1日が過ぎていくのは悪くないが、ちょっとモタモタすると振り落とされる感じがする。 この週末も、実はいろいろと宿題を持ちかえってしまった。でも本も読みたいし、美術館も行きたいし。さて、2日間をどう過ごそう。 気分…

余白と遠近法/円山応挙 空間の創造(三井記念美術館)

○三井記念美術館 特別展『円山応挙 空間の創造』(2010年10月9日~11月28日) 余白を活かし、絵画という平面に奥行きのある立体的な世界を描き出した応挙の特質に注目する展覧会。前半では、応挙が若き日に描いた眼鏡絵を紹介。眼鏡絵とは、遠近法によって描…

梟雄の死/マンチュリアン・リポート(浅田次郎)

○浅田次郎『マンチュリアン・リポート』 講談社 2010.9 思い起こせば、私が「満洲某重大事件」(張作霖爆殺事件)を初めて知ったのは、小学生時代、愛読していた『学習漫画 日本の歴史』を通してだったと思う。マンガには、坊主頭の張作霖が、明日は奉天だ……

見もの・売りもの/東美特別展(東京美術倶楽部)

○東京美術倶楽部 『第18回東美特別展』(2010年10月15~17日) 東京美術商協同組合が主催する特別展示・販売会。毎年、この時期には「東美アートフェア」という3日間の展示即売会が行われている。一昨年、山下裕二氏のギャラリートークにつられて、初めて行…

自由と解放、そして幻滅/ポピュリズムへの反撃(山口二郎)

○山口二郎『ポピュリズムへの反撃:現代民主主義復活の条件』(角川Oneテーマ21) 角川書店 2010.10 私は、もともと政治に関心があるほうではない。90年ごろまで日本の政治状況は、素人があれこれ論ずる必要を感じなかった。小さなトラブルや対立はあっても…

川越祭り2010

埼玉に3年間住んでいて、あまりいいことはなかったが、川越祭りだけは楽しかった。誰に教えられたわけでもないが、通っているうちに、だんだん見どころが分かってきた。 「川越まつり」公式サイトを見ると、29台の山車が掲載されている。毎年、全ての山車が…

関西・秋の展覧会(4)おまけ:東大寺散歩

展覧会めぐりの合い間に、朝の東大寺を散歩した(10/10)。 立派な角の雄ジカ。しかし、10/10-11の2日間、恒例の「鹿の角切り」行事が行われ、今年は32頭の角が切られたというから、これが最後の雄姿だったかもしれない。 めずらしく人の姿のない裏参道。一…

描かれたイタリア/グランドツアー(岡田温司)

○岡田温司『グランドツアー:18世紀イタリアへの旅』(岩波新書) 岩波書店 2010.9 グランドツアーとは、イギリスの支配階級や貴族の子弟たちが教育の最後の仕上げとして体験する、数ヵ月から2年程度のイタリア旅行のこと。17世紀末に始まり、18世紀後半にピ…

関西・秋の展覧会(3):京博、大津市歴史博物館、名古屋城

■京都国立博物館 特別展覧会『高僧と袈裟-ころもを伝え こころを繋ぐ-』(2010年10月9日~11月23日) 3連休旅行、2日目の続きから。本展は「袈裟を通して見えてくる日本の仏教と染織の歴史を辿る、初めての試み」。この企画を知ったときは、あまりにマニア…